第2話 友達が出来る魔法
俺の家には住み込みの魔法少女がいる。こんな事を言っても、誰1人として信じてくれる人はいないだろう。"自称"魔法少女のバリザが家に住み着いてから早くも2日が経つ。その間、コイツはテレビでバラエティ番組を見たり、家のゲーム機でゲームをしたりと娯楽三昧だ。今日も俺が学校から帰ると、あいつはアイスを食べながらドラマの再放送を見ていた。
「お前、ただのニートじゃねぇか…」
「うるさいなぁ…亮太の家に来てまだ2日だよ?もう少し休ませてよ」
勝手に人の家に押しかけた挙句、好き放題振る舞うとはいい度胸をしている。
「お前やっぱ魔法少女じゃなくてただの変質者だろ」
「うるさい!私は偉大な魔法少女だよ!後輩からは尊敬もされてるし!!」
「俺の知ってる魔法少女は邪悪な敵と戦ってる人であって、平日の昼間からアイス片手にテレビに齧り付いてる人じゃないぞ。そもそもお前は何しに俺の家に来たんだよ」
「だから行ったでしょ、あなたの世話をするためだって」
そういえばそんな事も言ってたような気がする。俺の世話をするどころか、俺がコイツの世話をしてるんだが。
「生憎お前みたいなやつに世話を焼かれるほど困ってないんだよ。分かったら早く出てってくれ」
「亮太、学校に友達いないでしょう?」
「…は?」
コイツは突然何を言い出しているのだ。
「学校に友達いないでしょ?って聞いてるの」
「そんなのお前に関係無いだろ」
「関係大ありなの。そういう面も含めてあなたの世話をしに来たんだから」
「何だよ、お前に何か出来るのかよ?」
するとバリザはふふ…っと笑って言った
「私は魔法少女だよ」
「もしかして、魔法で友達が作れたりするのか⁉︎」
ひょっとしてコイツは俺の人生の救世主なのかも知れない。
「はぁ…そんな事出来るわけないじゃない…魔法はそんなに有能じゃないよ。少しは脳みそ使ってよ…」
一回コイツをぶん殴ってもいいだろうか。
「じゃあもう出てってくれよ」
「ちょっと待ってよ。魔法で友達を作ることは出来ないけど、お手伝いすることなら出来るよ」
「お手伝い?」
「そう、お手伝い。自力じゃ無理でも、少し魔法の力を借りれば作れるかもしれないでしょ」
「具体的にはどうするんだよ」
「はいっ」
唐突にバリザがアイマスクを渡してきた。
「何、これ?」
「しばらくの間これをしてて」
「は?」
「魔法をかけてるところを見られたくないの」
「なんでだよ、裸にでもなるのか」
「ならないけど、恥ずかしいの」
「意味がわかんねぇ」
よほど恥ずかしいポーズでもするのだろうか。
「とにかく絶対それしててよね!!もし付けて無かったから出来る限り残虐な方法で苦しめながら殺すから!」
後輩から尊敬されている魔法少女とは思えないセリフだ。命の危機を感じたので仕方なく従うことにした。
「付けたぞー」
「ん。ちょっと待ってて」
本当は服を脱ぐんじゃないかと耳を澄ましていると、バリザは何やら呪文のようなものを唱えた。早くて良く聞き取れなかったが。
「もう外していいよ」
「本当にもういいのか?」
「大丈夫大丈夫。これでも私、かなり優秀な魔法少女だから」
「優秀なのを自分から言う奴は基本的に無能な奴だよ」
バリザはムッとして何か言い返そうとしていたが言葉が出てこないようだ。
「で、何の魔法をかけたんだ?コミュ力が上がる魔法か?面白い話が出来るようになる魔法か?」
期待に満ちて俺は聞いた。
たとえ魔法で友達を直接作ることはできないとしても、コミュ力さえ手に入れれば自力でも友達は作れるだろう。
バリザが答えた。
「次の授業が何の授業かを絶対に思い出せなくなる魔法」
「…え?ごめん、よく聞こえなかった。もう一回言ってもらえる?」
「学校で次の授業が何の授業かを絶対に思い出せなくなる魔法をかけてあげたの!これで必然的に周りの人達に話しかけざるを得なくなるわ!!どう?凄いでしょ!感謝してよね!!」
何を言ってるのだコイツは。そもそも自分から周りに話しかけられないから困っているのだ。コイツがかけた魔法では何の解決にもなってないではないか。
「ふざけんなお前!自分から話しかけられないからこんな状況になってるんだろ!」
「次の授業を尋ねることくらい出来るでしょ」
「仮に話しかけられたとしても毎授業尋ねてたらただの頭おかしい奴じゃねえか!」
「学校の人には話しかけられないのに、何で私にはそんな強い口調で話せるのよ!」
「お前みたいな気が狂った奴相手には緊張しないんだよ」
「なにそれ!もういいわよ!せっかく魔法をかけてあげたのに!」
そう吐き捨てるとバリザは部屋を出て行こうとした。
「待てよ、今かけた魔法を解除しろよ」
「一度かけた魔法は24時間有効なの。解くこともできない」
そう言い残しバリザは部屋から去った。
これでは俺は、凄いペースで時間割を確認するヤベェ奴にされただけじゃねぇか。
あの自称魔法少女と話してると気がおかしくなりそうだ。しかもあいつの場合、本当にそれで良かれと思ってやってそうなのが余計に厄介だ。何か早急に手を打つ必要がある。
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