第3話 ゲームが上手くなる魔法

 今日は土曜日、多くの高校生は部活や勉強、友達とカラオケに行ったりなど有意義な時間を過ごしている。もちろん俺はそんなイケイケ軍団とは無縁で、ひたすらソシャゲの素材集めに時間を使っていた。これが俺にとっての通常の休日…のはずなのだが"自称"魔法少女が来てからはちょっと変わってしまった。休みの日くらい家でゆっくりとゲームを堪能させて欲しいのだが…


『ガチャ』とドアが開く音が鳴ると同時に、甲高い声が聞こえてきた。

「亮太ーー何してるのーーー?」


ほら、また始まった。アイツは配慮という言葉を知らないのだろうか。休みの日くらいは俺に関わらないでもらいたい。


「うるせーな。もう少し静かにしてくれ」

 

邪魔者が来たので、素材集めの周回をやめ、イヤホンを付けて音ゲーを始める。これなら話しかけてこないだろう。


「ちょっと!聞いてる?」


バリザが強引にイヤホンを外してきた。やはりコイツの辞書には配慮という言葉が無いのだろう。とんだ欠陥辞書だ。


「うるせーな。ゲームだよ、ゲーム。音ゲーをやってるの。分かったらもう話しかけるな。」


 そっけなく言い放ち、再びゲームに没頭する。だが意外と難易度が高く思うようにクリア出来ない。実は俺は音ゲーが苦手だ。あんな高速で指を動かすの難しくない?


「クリア出来なかったの?」


「あぁ、そーだよ。俺には無理。」


「そっか。なら魔法でゲーム上手くしてあげよっか?」


「そんなことも出来るのか?」


「当然でしょ。私を誰だと思ってるの?」


「突然俺の部屋に現れた変質者」


「そうそう、変質者よ…ってちがーーう!私は魔法学校を主席で卒業したバリバリ現役の魔法少女よ!ゲームが上手くなる魔法をかけることくらい朝飯前よ」


おそらく定員割れでもしてる魔法学校なのだろう。さらに最近テレビに齧り付いているからか、ノリツッコミまで覚え始めた。何だかイラッとする。そして以前の如く、何の意味も無い魔法をかけてくるのだろう。


「じゃ、これ。」


そう言ってまたアイマスクを渡してきた。


「またこれかよ。別に隠さなくてもいいだろ。」


するとバリザはニコッと笑って言った。


「大人しくこれ、付けてね」


直感で計り知れない恐怖を感じたので大人しく付けることにした。


「よし、じゃあ早速かけるわね」


そう言うと、バリザは前回と同じく、早口で何らかの呪文のようなものを唱えた。


「はい、もうかけたわよ。」


「また随分と早いな。で、俺は本当にゲームが上手くなったのか?」


「自分の脇を見てみて」


 そう言われて俺は自分の脇腹を見た。すると両脇から見るからに気持ちの悪い8本くらいの触手が伸びていた。


「これで音ゲーは無敵よ!!」


コイツを徹底的にしばいたことは言うまでも無い。こんなの童話に出てくるような悪い魔女じゃねぇか。


「んもー、せっかく素晴らしい魔法をかけてあげたのにー」


バリザが不満げな顔をしてこちらを見てくる。


「もう少しまともな魔法は無いのかよ」


やっぱりコイツの魔法って魔法少女の魔法というよりは魔女がかけるような魔法じゃないか?それも性格の悪い老婆みたいな魔女の。魔法少女ってもうちょっと可愛く、ステッキみたいなのを使って魔法をかけるものだろう。。。いや、コイツは見た目こそ可愛いものの、中身が終わっているのだ。


アイツはやっぱ魔法少女を自称しているだけな気がしてきた。


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