美女と貧民

 はあ。

 美人冒険者かい。

 あー。

 いやー。

 あのね。

 ウチは冒険者の店なんだよな。

 事情通なんだ。それなりに。

 はあ。

 あー。

 ピンと来ない?

 うん。

 貴族様たちも、たまに依頼に来るんだよ。

 あー。

 どこそこの伯爵様は22歳のイケメンだとか。

 耳に入って来るんだよ。

 冒険者なんか紹介しても銀貨100枚くらいかな。手数料。

 いやー。

 伯爵夫人様に貸しを作るか。

 いやー。

 ごめんね。あんまし大っぴらに言えないんだ。

 庶民の娘は信用出来ないが、魔法使いの女の子なら勉強家だ。

 お姑様も喜んでるんだよね。自慢の嫁だって。

 女プリーストは人気がある。

 教会も貴族とコネが出来たことで、ウチに感謝してくれるし。

 貴族と教会の両方に貸しを作れるんだ。

 10代の美少女プリーストにゴブリン退治をやらせる?

 いやー。

 大して金にならん。

 それにねー。

 ゴブリンは人間を〝ピー〟するなんて噂を信じてる人たちもいなくはないし。

 女冒険者なんかやらせるより、貴族か金持ちのイケメンと――

 おーい。

 あー。そうだね。

 冒険者は大金持ちになっても、美人の嫁はもらえないよ。

 商人の娘と結婚。

 稼いだ金は資本金だ。

 店はお嫁さんが回す。

 そうだねえ。

 目端の利く若い衆と怪しい仲になるくらい、見ぬフリするしかないんだよねえ。能無しの婿様は。

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