第9話

 一般に類は友を呼ぶという。

 だが、呼びすぎだろ?

 有り得んブスの大集合だろ。

「えー、ジャー好きっていいじゃないの。とりあえず、趣味は合うじゃない」

細くて小さい目が、思った以上に離れている、ヒラメ顔のおかっぱが言う。

 見合い話をネタに、洒落たパスタ屋に集合した、アゴ美の友人達。だが、恐怖の館もかくやという御面相の集団だ。姿を消している俺たちに気づかず、好き勝手な事を喋っている。

「男って、ジャー好きよね。カッコつけてても情けない男って所が、共感するんじゃない?」

ヒラメ顔が言うと、骨が皮を被っただけの様相で、奇妙なくらい目がでかい、というより瞳孔が開いているような凶相が答える。

「やっぱり、ガルア様よね。耽美の貴族おぼっちゃまよね〜」

二人は訳のわからないことをほざいて頷く。

そこれ、スマホを眺めていた厚化粧のアンパンが、

「そんな男が可愛いのよ。ま、あんた達にはわからないかもね」

と、顎に手を当て余裕をこく。

「あらー、桃華ったら、またなんかあったの?」

ヒラメと凶相が聞くと、アンパンが肉に埋もれたウインクをした。

「まあね。あたしの魅力は、誘蛾灯の様だそうだから」

誰に言われた?

それ、絶対ニュアンスが違ってるぞ。

言い出しっぺのジャンプは蒼白だ。

「あ、兄貴ぃ」

腰砕になっているジャンプを、横目で睨む。

「ど、どうしたらいいっすかぁ…」

半泣きで頭を抱えるジャンプ。こんな奴らが集合するとは予想だにせず、可愛い女の子達とキャッキャ楽しく遊べると思っていたのだろう。

 だが、逆に、美人が混じっているよりいいかもしれない。

「で、あたし達になご美の引き立て役になれっていうのね」

ヒラメが言うと

「友達の為に一肌脱ぎますか」

それ以上脱ぐところがあるのかと、ツッコミたくなる凶相が笑う。

 アンパンが、ふうっと大きなため息をついた。

「でも、あたしの魅力に、見合い相手が虜になったら、ゴメン」

なるかい!

しかし、アゴ美は、

「それならそれで、縁がなかっただけだから」

と、お人好しな顔で言う。

「でも、鉄ちゃん二人とジャーだけだったら、女子があぶれない?」

あぶれてるよ。男子が何人いたって、お前らあぶれてるって。

「親戚の人が参加してくれるって」

アゴ美が俺達のことを、さりげなく頭数に入れた。ゲンナリ顔のジャンプを小突き、俺は海に行く準備を始めた。



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