第21話 話し合い①

 〇インをブロックされた事に納得できない木房さんが、美海を尾行して家を突き止めてしまった。彼女は説明を求めているものの、どう言うべきか…。



 「とりあえず、別の時に話そう。今話すと学校に遅刻するかもしれないから」

登校中に長話をしたら、間に合わなくなる可能性がある。


「そんな事言って逃げる気でしょ?」

木房さんは俺の手首辺りを掴む。


「逃げないよ。家がバレてるんだから、逃げても無駄じゃないか」


「それもそうだね。いつ話してくれる?」


時間は大切だが、立ち話で済む内容じゃないから落ち着ける場所も必要か。この2つの条件を満たせるのは…。


「…そういえば、お兄さんってどこでバイトしてるの?」


連絡先を教える時に言ったっけ。ごまかさずに話したほうが良いな。


「この辺にファミレスの○○があるだろ? あそこだよ」


「ふ~ん、場所はそこにしようよ。せっかくだしなんか頼んで良いよね?」


俺に奢らせる気か。俺の対応の悪さが原因だし仕方ないか。


「わかったけど、高めのやつは止めてくれよ」


「はいはい、後は日時ね。今日の放課後はどう?」


「良いよ。今日はバイトないからゆっくり話せそうだ」

今日中にケリをつけておくか。


「待って! あたしも一緒にいて良い?」


美海がそばにいてくれたら心強いが…。


「美海ちゃんも? これはアタシとお兄さんの問題なんだけど?」


「……」


美海は言葉を詰まらせる。木房さんを説得するのは難しそうだ。


「そんな顔しなくても、邪魔しないならOKだよ。これで尾行の件はチャラね」


「…わかった。それで良いよ」


「という事でお兄さん、今日の放課後にファミレスの○○に絶対来てくださいね。美海ちゃんと2人で待ってますので」


「ああ…」



 美海と木房さんと別れて電車通学をしてる途中、俺は姉ちゃんに〇インでさっきの一部始終を全て伝えた。するとすぐ…。


『大変だったわね。あの子がそこまでするなんて…。私も気にかけるから安心なさい』と返信された。


姉ちゃんは今日バイトがあると聴いているが、まさかホールの仕事をしながら俺達のやり取りを聴くつもりか? とはいえ、助けを期待してはいけない。


俺の行動が招いた結果なんだから、俺が何とかしないと!



 時は流れ放課後になった。シフトが入ってなくてもバイト先に行くことはあるものの、緊張しながら向かうのは初めてだ。うまくいってくれると良いんだが…。


そして、ファミレスの入り口あたりに着いた。美海と木房さんはお客さんが入るのに邪魔しない位置で待っていた。


「ちゃんと来ましたね。美海ちゃんが人質になってるおかげかな?」


「人質って、美海は関係ないだろう!!」


「冗談ですって。お兄さんには余裕がありませんね~」


そうかもしれない。さっきからイライラが収まらないからな。


「そんな事は良いから、さっさと入ろう」

早くこの件を終わらせたいんだよ。


「了解です」


俺・木房さん・美海の順で店内に入る。



 「いらっしゃいませ~」


店内に入ったところ、姉ちゃんの挨拶が聴こえてきた。すぐさま出入口に来てくれた訳だが…。


「あれ? お姉さんもここで働いてるんですね?」

驚きの声を上げる木房さん。


「そうよ。今日は来てくれてありがとう」


尾行の件を知りながらこの営業スマイル…。姉ちゃんはやっぱ凄いな。


「席に案内するわね」


テーブル席に案内されたので、俺と美海は木房さんと向かい合って座る。本番はこれからか…。


なんて思った時、美海が膝の上に置いてる俺の手を握ってきた。机の下で繋いでも木房さんに見える事はない。


美海にパワーをもらったおかげで何とかなりそうだ! 俺頑張るからな!

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