第12話 俺達の関係はさらに進む!

 バイトを一緒に終えた俺と姉ちゃんは、帰宅してからリビングに向かう。キッチンを見ると、料理中の母さんを美海がサポートしてるようだ。


「…おかえり~。夕食はあと30分ぐらいでできるらしいよ」

美海は笑顔で俺達のところに来てからそう言った。


「わかったわ。私達に手伝える事ある?」


「う~ん、特にないかな。お姉ちゃんとお兄ちゃんはバイトで疲れたでしょ? ゆっくりしててね」


「そうさせてもらうよ」

キッチンの広さ的に、3人以上は窮屈だ。今回は大人しくしよう。


「美海。夕食が終わったら、私の部屋に来てくれるかしら? 3人で話したい事があるから」


「うん、わかった!」

美海は再び母さんの手伝いに戻る。


「姉ちゃん。話ってキスの事だよな?」

小声で確認する。


「そうよ。気乗りしない大地に代わって、私がきっかけを与える事にしたの」


「俺がそう思ってたの、よくわかったな」


「これでも姉なのよ? 大地と美海の事はよく見てるつもりだから」


「そうか…」


このままリビングにいるのもなんなので、俺達は時間まで部屋で過ごす事にした。



 30分後に再度リビングに戻ってから夕食を食べる俺達4人。キスの事を知った美海はどういう反応をするんだろう? まさにってやつだな。


夕食を最初に食べ終わった俺は、自分の部屋に戻らず姉ちゃんの部屋の前で待機する。このほうが呼びに行く手間が省けて楽なはずだ。


……数分ぐらい待ったかな? 姉ちゃんと美海は一緒に階段を上がってきた。


「大地、早く話したくてウズウズしてるのね」


「そういう訳じゃないから」

姉ちゃんは好き勝手言ってくれる…。


「よくわかんないけど、良い話なんだよね?」

状況を理解できずポカンとする美海。


「すごく良い話よ。美海は心の準備をしておいたほうが良いかも」


ハードル上げないでくれ! 緊張が増すじゃないか!


「楽しみだな~」


「準備とかはしないから、すぐ入って大丈夫よ」


姉ちゃんがそう言って部屋に入ったので、俺・美海の順に続く。



 「大地、ベッドのふちに座ってちょうだい」


姉ちゃんの指示通り座ったら、姉ちゃんと美海が両隣に座ってきた。


「位置おかしくね? この話の主役は美海だろ?」


「私、大地の隣が良いわ」


「あたしも!」


「という訳だから、隣になったの。わかった? 大地?」


これにツッコむのは野暮なんだな…。


「わかったわかった」


「それよりも話って何? 早く教えてよ~」


美海の我慢は限界みたいだ。それを観た姉ちゃんは口を開く…。



 「今朝、大地のほっぺにキスしたでしょ?」


「したね。ほっぺだけど、あたしのファーストキスだったよ♡」


「あのキス、大地がとても気に入ったみたいでね」


「お兄ちゃん、本当なの?」


いよいよ答える時か…。ここまで来て怖気づくのは情けないぞ。


「…ああ。美海の唇が柔らかくて気持ち良かったよ」


「そうなんだ♡ 嬉しい♡」


「美海のキスをきっかけに、大地は他の女の唇をガン見し始めたのよ…」


誤解されそうな言い方止めて!


「お兄ちゃん、それどういう意味?」


案の定、美海は不機嫌な様子を見せる。


「姉ちゃんの言い方が悪いんだ! 俺が見たのはバイト先の先輩1人だけだよ」


「…他の女に変わりないじゃん」


「大地の嫌らしい視線に芽依は気付いてね。キッチンにいる私を呼び付けて一部始終を話したの」


「その後は?」


「私は大地に聴いた事を確認したわ。そうしたら『美海の唇が柔らかかったから芽依の唇も気になった』と自白してね。『姉ちゃんの唇も柔らかそうだ』って言ってくれたから、私も大地のほっぺにキスしちゃった♡」


「えっ! お姉ちゃんもしちゃったの!?」


「うん♡」


「お兄ちゃん。あたしのキスと比べてどうだった?」


それについては、俺もずっと考えていたが…。


「どっちも気持ち良かったよ。甲乙つけがたい」

こういう結論に達した訳だ。


そもそも、キスを比較すること自体おかしい気がするがな。



 これで一通りの話が済んだから解散すると思ったら、美海が何かを企んだのか笑みを浮かべる。何となく嫌な予感がする…。


「あたしのキスだけでお兄ちゃんがおかしくなったなら、同時にキスしたらどうなるんだろうね?」


同時ってまさか…。


「それは気になるわ。美海、早速やりましょうか♡」


「そうだね♡」


俺の両隣にいる2人は、頬にキスし始める。


あの柔らかさが2倍。…これはヤバいぞ。2人とも俺の反応を観察する余裕があるのか、キスの時間が長い。それだけ柔らかさを堪能する時間も増える訳で…。


……心のタガがどんどん外れていく。これからもこの柔らかさを味わいたい!


「2人とも、その調子で頼む」

無意識のうちに、姉ちゃんと美海の肩に手を回していた。


俺達3人は、キスの時間を思う存分楽しんだ。



 こうして、俺達きょうだいの関係はさらに進んだ。姉ちゃんと美海のキスを歓迎してる今、俺はシスコンなんだろうな。今更否定する気はないけど…。


そんな俺達の関係がさらに進むとは、あれが起こるまで思いもしなかったのだ。

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