第7話 手を出すなら私だけにして♡

 今、俺は姉ちゃんの部屋にいる。ベッドのふちに座っており、彼女も隣にいる状況だ。


姉ちゃんは俺の手を掴み、自分の胸に押し付けた。あまりの柔らかさに邪念が復活しつつある。


これ以上はヤバいから、すぐに何とかしなくては!



 「柔らかいでしょ? 大地が『話がある』って言った後にブラを外したの。嘘だと思うなら見てみる?」


姉ちゃんは空いた片手でTシャツのすそを掴む。


「しなくて良いから! …とにかく、これからは美海に余計な事をしないでくれよ!」


俺は姉ちゃんの手を強引に払い、逃げるように部屋を出る。



 部屋を出て早々、廊下にいる美海と鉢合わせた。急に出てきた俺を見て、彼女は一歩引いたものの…。


「…おっとと」


咄嗟の事だから、美海がバランスを崩しかけている。


「危ない!」


俺は右手を美海の腰の後ろに回し、左手で肩を掴んで支えようとしたんだが…。


「もう♡ お兄ちゃんのH♡」


…左手が美海の胸に触れている。俺はなんて事を!


「ご…ごめん」


「お姉ちゃんの前だと恥ずかしいよ♡」


「姉ちゃんの前?」


美海がそう言うので振り返ると、険しい表情の姉ちゃんがいた。


「…大地、何してる訳?」


「わざとじゃないんだ!」


「お説教が必要ね。すぐ私の部屋に来なさい!」


「…はい」


「ばいば~い♪」


笑顔で手を振る美海に見送られながら、俺は再び姉ちゃんの部屋に入る。



 またしてもベッドのふちに座る俺と姉ちゃんだが、立場がさっきとまるで違う。何でこんな事になるんだよ…。


「姉ちゃん、本当にわざとじゃないんだ。信じてくれ!」


俺の言葉を聴き、姉ちゃんの表情が柔らかくなる。許してくれた?


「手を出すなら私だけにして♡ 美海はまだ子供だからダメ♡」


「何言ってるんだよ!?」


怒ってないだけマシ…なのか?


「さっきは美海の前だからあんな態度を取ったけど、大地に手を出されたいの♡ 」

姉ちゃんは俺との距離を徐々に詰めていく。


「あの時のみたいに、正直になって♡」


その言い方、まるで揉むのを我慢してるように聴こえるぞ!


「私のほうが大きいんだから、揉みごたえはあるはずだよ♡」


「……」

返す言葉が見つからない。


「まさか、小さいほうが好きなんて言わないよね?」


この状況は本当にマズい。根掘り葉掘り訊かれて、俺の性癖がバレてしまう。変態ではないと自負してるが、姉ちゃんに知られたくないのは言うまでもない。


どうやってごまかせば…? 俺は頭をフル回転して考え続ける。



 「ねぇ、何とか言ってよ大地~♡」


俺の太ももの上に置かれた姉ちゃんの手が動き始める。…だんだん股間に近付いてるような? どうやらタイムリミットのようだ。


辻褄なんて気にしてられない。すぐ行動しないと!


「ふわぁ~」

何とか自然を装ってあくびをする。


「大地、眠そうだね?」


「まぁな。学校も大変だったし、バイトもあったから…」


疲れをアピールすれば、変な事はしてこないだろ。後は“早く寝る”と言ってこの部屋から退散すれば良い。


「だったら私の膝枕で寝る?」


「何でそうなるんだ!?」


「あれ? 眠そうじゃない?」


勢いよくツッコんだせいで嘘がバレそうだ。これ以上ここにいたら絶対ボロが出る。


「姉ちゃんの気のせいだろ。…少し早いけど俺は寝るよ」


「そっか。お休みなさい」


「うん、お休み」

俺はさっきとは違い、ゆっくりとした足取りで姉ちゃんの部屋を後にする。



 自分の部屋に戻った俺は、さっきの宣言通り早めに寝る事にした。今日は色々あり過ぎて精神面が本当に疲れたし、考えたい事が主に2つあるからだ。


1つ目は美海の事だ。最後に風呂に入った美海は、俺のパンツをクンカクンカしたんだろうか? …考えただけで恥ずかしくなってきたぞ。


2つ目は姉ちゃんの胸の柔らかさだ。あの柔らかさは何物にも代えがたいが、美海の胸にも同じ感想を抱いた。大きさは全てじゃないんだな。


…いかん、柔らかさを思い出してが元気になりかけている。考えるのを止めてさっさと寝よう。俺はそう心の中で決意し、心を無にした。

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