第8話 朗報か悲報か…
ベッドの上で、アラームが鳴る前に目が覚めてしまった俺。このまま目を閉じ続ければすぐ2度寝できるだろ。そう思いながら横向きになったところ…。
「やっとこっち向いてくれた♡」
何やら小声が聞こえたぞ? 気になるので、仕方なく目を開けて声の正体を探る。
「大地おはよ♡」
俺のベッドに横向きで寝ている姉ちゃんと目が合う。
「ねえち…」
途中で手で口を塞がれた。目を開けてわかったが、まだ薄暗いもんな。隣の部屋にいる美海を起こしかねない。
「大きい声出さない?」
俺は頷いて意志表示したところ、姉ちゃんは塞ぐのを止める。
「何でここにいるんだよ?」
「大地の寝顔を見たくなって♡」
これって“夜這い”だよな? どう考えてもブラコンで済むレベルとは思えない。一線超えてるだろ!
「美海だって大胆になってきてるし、私も頑張らないとね♡」
「張り合わなくて良いから…」
「あと…、昨日訊き忘れたアレについて知りたくてね」
「アレ? 何の事だ?」
「昨日、美海からお風呂の順番について詳しく聴いたよね?」
「ああ…」
「私の下着の匂い、嗅いでくれた?」
「嗅ぐ訳ねーだろ!!」
「声が大きい! 美海はもちろんだけど、1階にいるお母さんに怪しまれるかもよ?」
原因を作った姉ちゃんが言う事か!
「匂いを嗅いでなくても、興味は持ってくれた?」
「持ってない」
胸の柔らかさには興味を持ったが、これは絶対バレる訳にはいかない。
「興味すら持ってくれないの? 大地ってもしかして…」
「俺はそっち系じゃないから!」
朝から何度もツッコませるな! 疲れるだろ…。
ベッドそばにある携帯のアラームが鳴った。ようやく起きたかった時間になる訳だ。
「もうそろそろ美海も起きるだろうし、私は退散するね」
「わかった」
姉ちゃんは宣言通り、俺の部屋から出て行く。
普段起こらない事が起こる…。今日は不吉かもしれないな。
洗面台で口をゆすいだ後にリビングに向かうと、テーブルに全員分の朝食が置いてある。母さんと姉ちゃんは、隣同士に座って食べている最中だ。
「大地、今日はちゃんと起きたのね」
「まぁな」
姉ちゃんの夜這いのせいだけど。
昨日の夕食は美海と向かい合って食べたから、今朝は姉ちゃんだな。俺は早速その席に座って朝食を食べ始める。
それから少しした後、美海が階段を下りてリビングに来た。彼女は空いている俺の隣の席に座る。
「今日はお兄ちゃん早いね~。昨日はお寝坊さんだったのに」
「ちゃんと反省したんだよ」
美海の前で“夜這い”なんて言えない…。
「…これで全員揃ったわね。3人に言いたい事があるの」
母さんが俺達に言いたい事? 何だろう?
「今度、金・土・日の3連休があるじゃない?」
母さんはそう言って、リビングにあるカレンダーを指差す。
確かにあるな。俺は予定ないから、バイトのシフトを多く入れるつもりでいる。
「その3連休に、友達と2泊3日の旅行に行って来るわ」
「旅行? どこ行くの?」
美海は興味津々だ。
「温泉よ」
「良いな~。あたしも入りたい!」
「美海は若いんだから、温泉の効能に頼らなくて良いの。その代わり、お土産買ってくるから楽しみにしててね」
「わ~い♪」
母さんが温泉旅行に行くという事は、姉ちゃん・俺・美海の3人で過ごす事になる。普段なら気にしないが、夜這いされた後だと…。
「お母さん。家の事は私達に任せてゆっくりしてきてね」
「ありがとう美空。あんたがいるから、わたしは安心して家を空けられるわ」
安心どころかトラブルメーカーだと思うが…。母さんは姉ちゃんと美海のブラコンを知らないからそんな事が言えるのだ。
「あんた達も出前とか頼んで良いからね。柔軟に対応しなさい」
「お姉ちゃん。お母さんが羽を伸ばすんだから、あたし達も伸ばそうよ~」
「そうね。たまにはそうしようか」
「やった~♪」
これで話は一区切りしたので、全員黙々と朝食を食べ続ける…。
母さんが旅行に行ってる間、穏便に済むと良いんだがな。なるべく早く、姉ちゃんと2人きりで話す時間を作ったほうが良さそうだ。
そうしないと美海の前であろうと羽目を外しそうで怖い。姉ちゃんはともかく、美海は軌道修正できるはず。兄として、できる事をやっていこう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます