第5話 姉ちゃんは変態なのか?

 美海の部屋で風呂の順番について聴いていた際、彼女がとんでもない事を告白した。それは、姉ちゃんと美海は下着をクンカクンカした事があるらしい。


信じられない内容を聴いた俺は、しばらくフリーズしてしまう…。



 「お~い、お兄ちゃ~ん!」

隣に座っている美海が、俺の肩を掴んで揺らす。


「…ハッ!」

ようやく意識が戻ってきた。


「大丈夫? やっぱり話さないほうが良かった?」


「そんな事ないぞ。話して欲しいと言ったのは俺だからな」


どんな内容であれ美海を責めるのは間違っているが、続きを訊くべきか悩む。もしこれ以上過激な内容になったら…。


……いや、ここは訊いておいた方が良いな。姉ちゃんと美海がそんな事をするようになったきっかけを知りたいからだ。“怖いもの見たさ”の気持ちも多少あるし。


「美海。どうしてクンカクンカするようになったんだ?」


「それはね~、お姉ちゃんがやってるのを見たからだよ」


つまり、美海がおかしくなったのは姉ちゃんのせいか! 2人きりの時にビシッと言わないと気が済まないぞ!


「いつかは忘れたけど、あたしが脱衣所に入った時に、お姉ちゃんがお兄ちゃんのパンツをクンカクンカしてたの。あたしに気付いたお姉ちゃんは…」


「? 姉ちゃんはどうしたんだ?」


「顔を赤くしながら言ったんだよ。『美海も嗅いでみる?』ってね」


いくらごまかせないからといって、変態の道に誘うのは姉失格だろ!


「お兄ちゃんの匂いは前から好きだし、興味本位で嗅いでみたの。そうしたら…」


一体どうなったっていうんだ? 妙に空いた間が俺を不安にさせる。


「すごく良い匂いがして、あたしもすぐ虜になったんだ~♡」


「良い匂い? 俺は普段何もしてないぞ?」

“汗臭い”と言われるならわかるけどな。


「それでも良い匂いだったの! お姉ちゃんがハマるのもよくわかるね」


「そうか…」

俺には付いていけそうにない。


「お兄ちゃんより先にお風呂に入ると下着を目立つところに置けるから、意識してもらえるチャンスなの。後に入るとパンツをクンカクンカできるから、気分で順番を変えるのがベストなんだ~」


そういえば、風呂の順番を決める時に美海はこう言っていた。


<<「お兄ちゃんのでもでも損はしないけど、どういう得をしたいかによって話は変わるよね」


あの言葉にそんな意味があったなんて、聴いた当初はわかる訳ないよな。



 …美海の部屋の扉がノックされた。姉ちゃんが風呂から出たか。


「なんか用、お姉ちゃん?」

ベッドのふちから動かず、大きめの声で応対する美海。


「大地って、まだ美海の部屋にいるの?」


「いるけど?」


美海の返事を聴いた姉ちゃんは扉を開けた。…風呂上がりだからか、髪型は普段のではなくミディアムロングになっている。


「…2人でベッドのふちに座っておしゃべりしてるのね」


そう言う姉ちゃんは、少し不機嫌そうに見える。


「まぁね。ちゃんと宿題はやったから安心して、お姉ちゃん」



 美海が俺のパンツをクンカクンカするきっかけを作ったのは姉ちゃんだ。良い機会だし、2人きりでじっくり話したいな。


俺は美海の部屋をすぐ出た後、廊下で姉ちゃんに声をかける。


「姉ちゃん。俺が風呂から出たら話があるんだけど良いか?」


「話? 今からじゃダメなの?」


「長くなって美海に迷惑かけるかもしれないからダメだ」


俺が入り終わらないと、3番目の美海が風呂に入れない。


「そう…。場所は私の部屋で良い?」


「わかった。後で行くから」


俺と姉ちゃんは、自分の部屋に入っていく。



 自室に入った俺は、風呂に入るために着替えを準備する。…もし美海の言う事が正しければ、脱衣カゴの一番上に姉ちゃんの下着が堂々と置いてあるはず。


無視しないといけないのはわかっているが、美海の言葉が頭の片隅に残り続けているのも事実。少し気になるような…。


って、何を考えてるんだ! しっかりしろ俺! 姉ちゃんの下着はさっさと脱いだ服で隠してしまえば気にならないぞ。


そう心の中で決意してから、俺は部屋を出て脱衣所に向かう。

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