第4話 由実の兄

その頃、剣斗は、誰もいない廊下を走っていた。

とそこに、剣斗の目の前に、急に人が現れ、剣斗はその人にぶつから・・・ない。

むしろ、その人の体をすり抜けた。

「えっ・・・」

そして、剣斗は、その人の顔をみた。その人は、いや、それは、由実の兄、だった。

「やぁ剣斗、久しぶり」

その声も、あの頃のまま。

「えっ・・・でも、由実のお兄さんは不慮の事故でなくなった・・・はずじゃ・・・」

失礼なことを言ってしまったと感じてしまった剣斗は、声が少し小さくなる。

「うん、そうだよ。あの日、僕は車にはねられ死んだ。でも、由実を守る、そうきめたから、今もここにいるんだ」

「由実もきっと喜びます」

だが。

「言うな。由実には言わないでくれ」

「え・・・なんでです?」

「由実は、自立して生きてほしい。僕は、事故のときや怪我をしそうなときだけ守る」

由実の兄は優しく、妹思いだが、少し頑固なところがある。

「わかりました。ですが、少し言ったほうがいいと思うことがあって・・・実は由実、少し学校でいじめられているようで・・・」

由実の兄の目つきが鋭くなっていくのが分かった。剣斗はゾッとした。

「いじめの主犯格は、気の強い女子グループだと思います。ていうかそうですね」

「ふざけるな」

由実の兄は一言、そう言った。

剣斗はふたたび、ゾッとした。

「いま、人狼鬼ごっこ中で。人狼になりすまして行動すればいいと思います」

「剣斗くん、ありがとう、そうするよ。人狼の中に僕の友人がいてね。霊感もある友人だから話も通じる」

人狼なりすまし作戦、決行!

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