第3話 没データは没データで狩る
祭壇に触れると意識がとんだ。気が付けばただの真っ暗な空間の中に浮いていた。だが、遠くの方に金色に輝く何かが見える。吸い込まれる様にそれに引き寄せられてみると徐々に姿形が見え始めてきた。
「あれが破竜神ドグーマか」
巨大と呼ぶしかない金色の竜の咆哮、更に背中に生えた4つの翼を大きく羽ばたかせる。ドグーマが口から噴き出した黒炎は翼の起こした強風に煽られこちらへと凄まじい速さで向かって来る。
咄嗟に左手に持つ骨の盾を突き出した。俺がそうしたというより勝手に身体が動いてそうしたという感覚。きっとプログラムがそうさせた強制イベントのようなもの。
黒炎を浴びた盾は青色の輝きを放ち始めた。【護竜神の盾】、【防御力999】、アイテム欄を見ると名前と性能がその様に変わり、アイテム説明にも変化が。ドグーマによる黒炎のダメージは無効化出来る様だ。
ドグーマとの距離が縮まる度に黒炎を浴びる事になったが、やはり勝手に身体が動いてダメージらしきものを受ける事はなかった。そうして受けたダメージの1/5を自分のMPに変換する【護竜神の冑】、20%の反射ダメージをあたえる【護竜神の鎧】、対ドグーマへの特効が付与された【護竜神の剣】を装備した状態でドグーマの前に立った。
トリガーとなる隠しボスが没となった為、真のステータスが没化してしまっていたのが骨と牙装備の正体だった。これじゃ色々と試してもわからなかったはずだ。
没には没を。どうやらこの一式揃ってようやくまともに戦える相手らしい。もちろんレベル99カンストは必須の様だが、そこまで上げるのはやった者にしかわからぬ作業プレイ。
さてと、祭壇の前に戻された。
「ようやく、終わった」
てっきりコンプリートプレイしたものだと思い込んでいたが、実際には99%しか達成していなかった真コンプリートを30年越しで達成出来た。それを想えば討伐報酬が『限界を越えし者』という称号を得るだけなのにも目を瞑れる。
「あれ? 普通は倒れて弾き出されるはずだが、立ったまま出て来たという事は……」
「それに、その全身青色の装備は!?」
プレイヤー達の山の方から人の声らしきものは聞こえたが何を言っているかはよくわからなかった。大問題発生、今、俺はあれこれと考え事で忙しい。
「ぐっ、コンプリート率が99%のままだと? まさか、破竜神ドグーマにもドロップアイテムを!?」
1/1092で落ちる装備を4つも集めさせてようやく対抗出来る隠しボスを用意しようとしていた制作陣だ。それにも1/1092のドロップアイテムを仕込むくらいするだろう。あんなギリギリのバトルを何回もやるわけ……ある、完全コンプリートするまでやるに決まっているじゃないか。
それに、まだまだあるんだよな。コンプリートプレイしていたつもりで実はコンプリート出来ていなかったゲームがゴロゴロと。俺は古代遺跡群とも呼ばれる『アナザー・ダイヴ・リワールド』でしばらく没データを掘り続ける事になりそうだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます