第7話 没クエスト発生

 俺が『ファイナル・サーガⅦ』のワールドオープンに合わせて没データ発掘プレイを始めてから5日間ほど。『魔塞都市ベルナダウン』へとやって来た。


 辺りにはLv15ほどに達したプレイヤーの姿がチラホラと。その多くが2人の仲間を引き連れている。

 

 最初に仲間となるヒーラーのメリス。そして魔法アタッカーのマリカだ。


 ※※※1ポイントのダメージを受けた※※※


「いたたっ……」


 と、言う程でもないんだがモンスターに襲われたのは確かだ。


 後輩を見守る温かい眼差し?その様な感じでモンスターを狩るプレイヤー達をボーっと眺めていたせいだろう。


 犯人は上空の方でフワフワしているアイツか。


 超速で右へ行った?


 左上?


 背後右上?


「ん? UFO?」


 一瞬そんな風に思ったのは、サンダーエレメントだった。


 オリジナル版の頃は宙に浮いていて空間転移を繰り返しながら攻撃、そんな行動設定だったのだが。


 それをフルダイヴ化処理したらUFO的な軌道になるわけか。


 レベル15帯だと動きについていけず苦戦するだろう。ただ、育ち切った俺は動きを目で追えている。


 左上!


 背後右上!


 ※※※アクアトルネード!サンダーエレメントに9999ダメージ※※※


 ※※※マリカはサンダーエレメントを倒した※※※


 もちろん、あっさりと撃墜してくれたマリカにも。


 ここいらのモンスターは物理攻撃が通りづらい。そうやって困ってるところを颯爽と現れ助けてくれる、そんなイベントシーンから加入するレベル15マリカだが。


 うちの子たちはクリア済みデータのパーティメンバーなので今やレベル70。


 そんなマリカも引き連れ、彼女の故郷である『魔塞都市ベルナダウン』へ。加入後に入るとどうなるかわかっているが。


「どこに没データが埋もれているかわからない以上、入らないわけにもいかないからな」



 入ってみた。


「まだ……、あの時のままなのね……。でも、いつか必ず」


 マリカは廃墟同然となった故郷を眺めていた。邪星帝ネーブラの軍勢に焼かれた故郷を…。


 オリジナル版の時はウインドウを流れるそんな台詞を読めばいいだけだったが。


 こうしてリアルな仲間として感じられる状態で側にいると。フルダイヴ化したお陰で会話がそういった会話が出来る様になると。


 こういう時、どう声をかけるべきなんだろうな?


「マリカ。いつになるかわからないがベルナダウンはいずれ甦る。焼け落ちたとは言え、都市はここにあるのだからな」


「そうね…。ありがとう、ベルソガ」


 俺じゃない…。


 子供部屋おじさんの俺が弱った女子にかける台詞を思いつくはずもない…。


 マリカに声をかけたのは3人目として加わるジェネラルの『ベルソガ』。彼もまたネーブラに故郷を奪われた者。


 しかも、マリカよりエグくて大地ごと消失…。だからこそ言える台詞だ。



 没データを求めて魔塞都市ベルナダウンの中を歩いて巡る。瓦礫に何かの燃えカスを目にするだけの光景がしばらく続くだけだった。


「ごめんなさい……。学院のせいで、私達のチカラが足りなくて……」


 マリカはその様なものに反応しては謝り続けていた。


 マリカが通っていたメリデェ魔導学院は魔導のチカラを恐れた邪星帝ネーブラに狙われ焼け落ちた、その巻き添えを食らった様な形で学院のある都市も延焼した。


 学院の者の中で1人だけ生き残ったマリカが全ての責任を感じてしまっている、と…。



 そして、都市の中心部にあるメリデェ魔導学院があった場所へ。


「みんな……。カルネ先生、私はまだあなた達の仇を討てずに……」


 討ったよ。マリカ、君はみんなの仇を討ったんだ。


 さっきのベルソガの台詞を参考に何とか思いついたかける言葉。俺達はクリア済みパーティなので仇である邪星帝ネーブラを倒している。


 けど…。


 そこはゲーム。クリアするとクリア前に戻ってしまう。だから、今のマリカの様な台詞になる。


 思いつきはしたが、言えないな…。



 焼けた学院跡を調べて周ったが…、これと言って何か目についたものはない。


 なかったはずの物があればそれは没データ。頭の中にある2Dドット絵だった頃の光景と照らし合わせたが。


 宝箱が現れていた、わけでもなく。


 隠し階段が現れていた、もなく。


「でも……。何だろうな、微妙に感じた違和感は?」


 2周目。


 さっきより念入りに下ばかりを向いて歩く。


 何か目についた物はない、が。


「そっちか! 耳についた!!」


 ゲーム内なので常にBGMが流れているわけだが一瞬途切れた。


 あの辺りを歩いてみる。踏み込めばBGMが途切れ、抜ければ再び流れる箇所があるとわかった。


 無音ゾーンの範囲としては1歩分、2Dドット絵だとすれば1マス分か?いずれにせよオリジナル版になかったはずのものが現れたには違いない。


「ここに没データが?」


 瓦礫を調べてみた。かなり強引にだが奥の地面を引きはがせそう。


「なんだ? これは!?」


 </div>とか


 <?php>とか…


 瓦礫の下に、真っ暗で底の見えない穴が開いていた。そこからあまり見慣れない文字の様な物がどんどん噴き出して来る。


「これ、多分だけどプロフラム言語とかかな?」


 BGM?今度は何かが流れ始めたぞ…。


「このBGMは、『星の回廊』!」


 それは、クリア後の2周目プレイで初めてお目にかかれる隠しクエストの入り口を見つけた時に流れるもの。


 仲間の専用装備を拾いに行く場所とも言える。


「没クエとは大物が眠っていたもんだ」


 それにしても…。


 専用装備は通常プレイで出現する『星の回廊』で全てが揃ってしまうわけだが。

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