第6話 命名、発掘プレイ。そのわけは…
ファイナル・サーガはファミコン時代に発売されたレトロゲームである。
販売元の『エリプス社』はそれまでに何本ものゲームが大コケして多額の負債を抱えていた。これが最後の賭け、と制作したファイナル・サーガは記録的なヒット作となり2作目、3作目とシリーズ化。
そもそも土壇場の挑戦から始まったタイトルはシリーズを重ねる度毎に革新的な試みがなされた。ただ、その様な行いには多くの失敗が伴いそれらは大量の没データと化していったのである。
そう言えば…。
フルダイヴ化したここへ帰って来た感動でうっかりしていたが…。ワールドへインする時、
「~~コンプリート率88%。それでは『ファイナル・サーガⅦ』へ行ってらっしゃいませ!」
そっ、そんなに下がるのか?
このゲームにはオリジナル版の頃からモンスターやらアイテムなんかの回収率を示す図鑑があった。当時は100%。
それが12%も落ちた…。
「ここは、没データだらけじゃないか!」
そんなわけで俺は発掘プレイの基礎から徹底的にやる事になった。
※※※ゴブリンを倒した※※※
※※※ウェアウルフを倒した※※※
※※※ゴブリンを倒した※※※
※※※ゴブリンを倒した※※※
※※※ウェアウルフを倒した※※※
ふぅ~~、どっちもざっと500体オーバー。ドロップの中に没アイテム無しっ、と。
あと、このエリアに没モンスターはわいてないっ、と。
「じゃあ、次の雑魚モンスターいくか!」
どんなゲームにも共通する事。没データの中で没モンスターと没アイテムが占める割合は高い。
そもそも何匹も、いくつも登場する類。
クリエイター達がポンポンとアイディアを出した結果。容量的に入りきらないとか…。よく考えたら何かと被ってるとか…。
用意数が多い分だけ没にもなりやすんだろう。
そんなわけで初回プレイと同じ順にフィールドをめぐりモンスターをしばきまくる羽目になった…。
結局こうなのか…、クリア済みデータを利用したにも関わらず…。この壮絶過ぎる作業感が没データ探しを『発掘』などと名付けた由来らしい。
確かに、遺跡でハケ持ってササササやっている人達にどこか似ている気もする。繰り返し、繰り返し、ひたすら繰り返し。
その苦行が10日間で終わったのを速いとみるか、遅いとみるか…。
まだ序盤エリアから出ていないのだが…。
せめてもの救いは成長期をとっくに終えたうちの子たちだろうな。レベル70カンストの3人。
戦闘に参加出来るのはオリジナルの頃と同じで主人公とメンバーから3人選抜。育ち切ったうちの子たちなら誰でもいい、テキトーでいい。
「主人公は安定の補欠確定で」
そんな方針で主人公以外のテキトー3人にバシバシ薙ぎ倒してもらった。
そうして、ついに。
※※※ヘイケノカブトを入手しました※※※
※※※ヘイケノコテを入手しました※※※
「きっと一式揃う平家シリーズ装備って事だろうな」
防御力99アップ。
ヘイケ2つ以上で更に防御力の30%を上乗せ。3つで50%。
これ、序盤で入手出来るものにしちゃ随分と性能高いじゃないか!
「なんか、観光地で見かける浮かれた外国人観光客状態だな…」
スクショして気付いた。鎧だけがないせいで普段着に兜と籠手だけ装着したあの感じになってしまった…。
その浮かれた外国人観光客でモンスター戦を繰り返してみた。そして、こいつの真価に気付かされた。
「なるほど、盛者必衰の理だったか……」
ふと気が付けばステータスがおかしな事になっていた。防御力0、ヘイケ2つで防御力の20%分をマイナス、3つで50%分マイナス。
序盤は勢いあるが徐々に弱っていく平家そのものだ…。
まあ、あってもいいがなくてもいいネタ装備。結局没になったか。
「がいこくじんかんこうきゃく? じょうしゃひっすい? ねぇ、
「あぁ、マリカ、ごめん。何でもないから気にしないでくれ」
うちの子の1人。マリカは攻撃魔法のエキスパート。雑魚をまとめてサクッと片付けてくれるのは発掘プレイにおいて実に助かる存在。
さて、うっかりリアル用語ばかり口走ってしまったな…。
フルダイヴ化に伴いAIで動く仕様になったパーティメンバー。彼らはゲーム世界に直接関係ない様な言葉は理解出来ない様に制限がかかっているらしい。
ゲーム内なのでそんな事もあるが。
苦楽を共にした昔の仲間と初めて会話が出来る様になったのは嬉しい進化だ。
「行こうか、マリカ」
「そうだね。私達には目指すところがある」
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