第三章 星護高校 ①
クラスは千尋とも、
「あ、透子来た! おはよー。クラスが同じでよかったね」
「おはよう、陽菜ちゃん。学校でもよろしくね」
千尋と一緒にドアをあけて教室に入ると、陽菜が手を振ってくれた。
何だか一斉に視線を集めた気がしたが、振り返ると皆目を
手続きや教材の授受は先週終わっているので、透子はホームルームで簡単な自己紹介だけをした。
「
まばらな拍手とあちこちで
千尋は、目だけで笑った。
「右足と右手が同時に出ていた」
「……人前でしゃべるの、苦手で……」
クラス中から何か注目されている気もするが、この時期の転校生は珍しいのだろう。その日は一日模試だったので休み時間も参考書を
「俺は部活に出てから帰るけど、どうする?」
「まっすぐ帰るつもり……」
じゃあ後で、とあいさつしながら教室を出た二人の前に髪の長い、
たしか、一番前の席に座っていたクラスメイトだ。なんだか敵意をもって見上げられている気がするのだが、
制服は規定のものだが裾は短く切られ、高校指定の白ソックスは履かずに紺色、と制服は微妙にカスタマイズされていた。アイドルの一員を名乗ってもよさそうな
「千尋くん、お久しぶりね。夏休みの間一度も会えなくて、
にこっと
表情に若干の
「……あっ……
白井と呼ばれた美少女は、ずいいいっと下がった千尋とおなじ距離だけ間合いを詰めた。
「白井だなんて、他人行儀に呼ばないで。桜って呼んでいいのよ。さ・く・ら。りぴーとあふたみー」
「他人だし、呼ばない……かな」
「照れなくてもいいの。野球部の練習に行くのでしょう? 私も見学したいわ」
千尋はうっと言葉に詰まって首を振った。
「わ、悪いけど……ちょっと邪魔だから、ごめん! 追って来ないでくれっ!」
そのまま振り返ってダッシュで逃げて……白井は「もうっ! 照れ屋ね!」とその場で怒っている。
透子は
「あー久々に見た。白井の求愛行動! これ見ないと学校に来た気がしないわー」
透子の後ろで陽菜が面白そうに笑う。
「きゅ、求愛行動」
「そ。
そんな、本人の目の前でいわなくても、と透子があたふたしていると、桜はくるりと振り返った。茶色い目がこちらを見上げている。
桜色のリップは
「あなたの事は夏休みの間から知っていましたわ」
「まじで? あんたの情報網どうなってんの?」
陽菜が驚く。
「あなた──千尋くんと一緒に住んでいるんですって?」
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