第一話 旅の始まり
キョロキョロしながら言う白狐に、女は、あっははと声を上げて笑った。
「お兄さん、腹が減ってんだろ?ろくなもんないけれど、飯食っていくかい?」
(白狐は、腕を組み、しばらく考えていたがスッと立ち上がった)
「うーむ。……まぁ、少し疲れているので、休ませてもらおうか。」
「あいよ。もうすぐ秋刀魚も焼ける。先に、中に入って待っててくれよ。」
(女に言われ、白狐は、小屋の方へ足を向け、歩いて行った)
(小屋の中は、薄暗く、何か妙な臭いがしていた)
(白狐は、草履を脱ぐと囲炉裏の側へ行き、腰を下ろす)
「お待たせ〜。秋刀魚、美味そうに焼けたよ。」
(焼いた秋刀魚を皿に入れ、女が小屋の中に入ってきた)
(真っ赤に燃え盛る囲炉裏の前で、飯を食う女と白狐)
「あー、腹いっぱいになった。助かりました。」
「いやいや。たいしたもんなくて、逆に申し訳なかったね。」
(女は、汚れた食器を持ち、土間へ下りようとした)
(その女の手から食器をヒョイと取り上げ、白狐は言う)
「ご馳走になったのだから、片付けは、俺がやるよ。」
「そうかい?ありがとう。」
(にっこりと笑う女に、白狐も軽く笑って見せた)
(土間の洗い場で食器を洗いながら、白狐は、考えた)
『こんな山奥に、女一人で暮らしているのか?ここから山の麓まで、かなりの道程だが、どうやって秋刀魚を買いに行ったんだ?』
(そんな事を考えていると後ろから、声を掛けられた)
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