第51話  二ノ宮の過去 

 離れてたのはたった一日だったが、二ノ宮とはずいぶん久しぶりに会った気分だった。


 デート中だという愛良に二ノ宮を押し付けられて、僕らは二人で家まで帰ることになったのだ。


「『桜散る中』の内容を変更したの……確認したわ。タケルが死んだ後に雫に会うためにタイム・リープして、告白前に戻るのね? そして、タケルは雫に告白しない選択をするのね? 面白くなったわ。是非これでシナリオを書いてちょうだい!」


 二ノ宮は、無邪気な笑顔でタブレットを僕に差し出してきた。


「僕の物語を散々引っ掻き回してくれたな……」


 僕は、独り言のつもりで小さな声で言ったが、二ノ宮には聞こえていたようだ。


「あら、嫌なの? 書籍だって、編集者と幾度も打ち合わせをして作っていくものだわ。おかげで、粗削りだった物語がすっきりとして、テーマもはっきりとしてきたわ」


 タームループものじゃ無いんだけどなぁ……僕は大きく息を付く。


「心だけでも、戻って告白しないことにしたかったんだけど?」


「それがタイムリープでしょう? 今度は、雫からタケルに告白されるのよね」


 二ノ宮は、僕の書き換えた内容にご満悦だ。


「劇でやる場合は、登場人物を絞り込んだ方が良いのよ。タケルは、親友のみなとに雫のことを押し付けてるわね。湊を司馬君にやらせると良いわ。

 湊は、雫のことを密かに思ってるら、司馬君は地で出来るわ」


「司馬は、誰が好きなんだ?」


 二ノ宮は、愛くるしい顔で微笑んで言った。


「ひ・み・つ! それより、早く帰ってきたわね? 何かあったの」


 僕はピクリとした。


「兄弟が出来る事になって……」


 僕は恥ずかしくなって俯いてしまった。


「あら、おめでとう!! 嬉しいでしょう?」


 二ノ宮は、屈託なく笑う。本当に嬉しそうだ。


「いや、この年で兄弟が出来るのは、さすがに恥ずかしいよ」


「ど~してぇ!!? 私は嬉しかったわよ。可愛くて仕方ないわ」


「そんなもの?」


 二ノ宮は、ニッコリ笑って、ウンウンと頷く。


「ママとの間に血が繋がった弟が出来たのよ。もう!! 「お姉ちゃま」って呼ばせたくて教育したかったのに~~ お姉ちゃんに先を越されちゃったの~~」


「確か、麗華さんは大学を卒業して直ぐに、アメリカに留学したんだよな? 何時君のお母さんが亡くなって、何時、君のお父さんと結婚したのか知らないんだけど……」


「絵里香ママは、身体が弱くて、私たちを生んで直ぐに亡くなったわ。ママと結婚したのは、私と愛良で頼んだの。ママになってって。それで、大学を卒業した時に留学先で式を挙げたの。パパはね、のお願いを何でも聞いてくれる人だったから」

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桜散る中 ―― 僕は舞い戻る ~引きこもりの桜庭君が高校デビューしたら演劇部に勧誘された件~ 月杜円香 @erisax

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