第27話  二ノ宮と合作小説を書く

 僕は、強制的に演劇部へ入部となり、次の日に、司馬に首を捕まえられるように、演劇部の部室まで連れていかれた。

 その後を二ノ宮愛里と、都倉亜美と共が嬉しそうな顔で、ついてきていた。

 僕は、取り調べに向かう囚人の気分だった。


「いやね。取って食べたりしないわよ」


 都倉が言った。


「ひょっとして、部活動にはいること事態初めてなの?桜庭君」


 確信をつかれて、僕は立ち止まってしまった。


「本当のことだとは……」


 司馬も都倉も二ノ宮もあきれたように口を揃えていた。


(悪かったな……部活が初めてで!!)


 僕は、分からないように舌打ちした。


「嫌な顔をしても無駄よ。桜庭君、あなたは演劇部の脚本担当になってもらうわ」


 二ノ宮は、ニッコリ笑って僕の短編ノベルの『桜散る中--僕は舞い戻る』のプリントアウトしたものを僕に渡してきた。


「これ!?」


「そう、これ。タケルの視点からでも良いけど、雫の視点から書いても面白いと思うのよ。書いてくれないかな~もう一度。雫視点で」


 二ノ宮は、僕の顔を覗き込むようにして言ってきた。

 僕が、「タケル」を主人公にしたのは、作者たる僕が男だったからだ。


 14歳の僕に女子の気持ちなど、分かろうはずもない。

 それを二ノ宮に言うと、


「だから私が、手伝うのよ。因みにこっちが私が書いた今回のシナリオね」


 もう一つプリントのたばを渡された。


 これが、この前の入学式の時にやった劇のシナリオか……。

 僕はざっと目を通した。

 なるほど、しずく視点で書かれているんだ


 雫視点にすると、全く女子受けする話になると思ったし、純愛がテーマになると思ったからな。


「亜美ちゃんが雫なの。そのイメージでもう一度、練り直して欲しいわ」


 僕は、思わず吹き出した。


 雫のモデルは、一応マリエだぞ。

 でかくて、暴力女じゃない!!






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