第23話  演劇部員と僕

 気が付くと、僕は体育館の方に誘導されていた。


「等身大の物を書けば良いのよ。凝り固まった設定なんて無くても桜庭君は、良い感性をしてるんだから」


「だから、君は僕の何を知ってるんだい?ほとんど、初対面だよね?」


(愛良と幼馴染みだから、双子の自分も幼馴染みだと思ってるのか?)


 すると二ノ宮は、僕の顔をジッと見つめて言った。


「あなたの事は、愛良からよく聞いてたわ。お隣の真生君。三条家には、私もいたのよ」


「え!?」


 初めて聞く情報だ。


「でも!!一度も見たことが無い!!」


「出たことが無かったから……入退院の繰り返しばかりだったし」


「何処か悪いのか?」


「ウ~ン! お姉ちゃんの半分の大きさで生まれて来たの。その上心臓がイマイチ具合が悪くて……で、日本のお医者様には見放されたのよ。それでアメリカに行って今に至ってるの。だからお姉ちゃんより、発育不全なのは仕方ないの」


 二ノ宮は、薄グリーン色のワンピースでクルリと一周して見せた。

 今は、大丈夫だと言いたいのだろう。


 そこに、10名あまりの人達が、体育用の上下を着て運動場から戻って来た。


「あら、真生君。アーリャに捕まったの?」


 義姉の馨さんだ。この人も演劇部員か?

 走り込みをしていたのか、息が上がっている。


「馨さんも演劇部員ですか?」


「これでも部長よ、一学期で引退するけど」


 馨さんは屈託なく言う。生徒会ばかりじゃないんだ。


「ちょうど良いわ。皆に紹介するわね」


(え? え?? 何を言ってるんだ? 馨さん)


「我が演劇部の主演女優の木崎亜美よ」


 同じクラスの木崎だ。歓迎劇の時も主演をしていたな。


 一応手を出すと「パチン!!」と叩いてきた。


「どーも!!」


「そして、DIYの得意な司馬」


 こいつも同じクラスだ。

 そして、この二人、二ノ宮のお守り役とか言ってた。

 不思議なことに馨さんは、それ以上部員の紹介をしてこなかった。


 どうやら、僕を演劇部に入れて、自分で探れの意味らしい。


「アーリャ、五月までには演目決めておいてよ。こちらの仕上がりは良いんだから」


「馨せんぱ~い!! 今、原作者がスランプ見たいですぅ。頑張って、いい作品を書いてもらえるようにしますので、今しばらくおまちくださ~い」


 馨さんは、僕を見ながら「へぇ~」とニヤニヤ笑ってる。









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