第18話 ライトノベルを書いた訳
「もう、書かないのか?」
ピンクのスウェットの上下が、嫌みなく似合ってる麗子さんは、僕を真っ直ぐに見つめて言ってきた。
「長編とか?賞を取ったのは、短編の一万字以内のものだろ?」
「でも、ここに来たら、勉強もしないと……もう、マリエのもとには帰れないですから……小説といってもライトノベルですよ。純文学とは違います。友人のやっていたSNSを見ていた時に、たまたま投稿サイトを見つけて、読みふけってたら、なんだか僕にも書ける気がして……適当に浮かんだことを綴っただけです。賞には、応募した覚えはなくて……マリエが勝手に応募したんですよ」
「パスワードがMARIE0721って、お前相当なマザコンだな」
僕は言い当てられて赤くなる。
マリエの名前と誕生日をパスワードにしていたのだ。
「これじゃあ、見てくださいと言ってるようなものだぞ!」
僕は不利になりそうなので咄嗟に話題を変えた。
入学式の後の演劇部による歓迎劇だ
「それより二ノ宮、さっきの劇。何で僕の作品が使ってあったんだ?」
それまで大人しく、紅茶を飲んでいた二ノ宮は、カップをテーブルに置くと悪びれもなく言った。
「あら、大分脚色したわよ。本当は、そのまま使いたかったわ。でも、原作者の許可が取れなかったのですもの。あれは雫視点で、脚本を書き換えてあるわ」
「じゃなくて、どうして僕の小説がってこと」
「あっ!!ひどーい!!私、あなたの作品をフォローして、レビューも書いたのに!!その時に演劇のネタにして良いか聞いたわよ」
「知らないよ、趣味で書いてただけだから通知は全部切っていたから」
二ノ宮は、あんぐりと口を開け麗子さんを見た。
「ママ~~」
「こういう奴だから、おそらくpvもレビューも気にしてなかったんじゃないか?」
そうなんだ。あれを書いた後、僕は突然SFにハマって資料集めにいそしんでいた。宇宙は壮大で、調べれば調べるほど、膨大な量になってい生、その大事な資料が入ったパソコンが今日、僕のもとに戻ってきたんだ。
「私、演劇部の演目を決めるのと、演出を担当してるの。演目を決めるのに素人の書いたものの方が面白い時があるのよ。それで、『ヨムヨム』に登録してたの」
「それで……あれを見つけたわけか……」
「お姉ちゃんが、知り合いかも?って言ってくれた時は、嬉しかったわ」
二ノ宮は、愛良そっくりな顔で笑う。
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