第16話  戻ってきたノートパソコン

 二ノ宮の後について、僕は歩いていった。いったい何処へ連れて行く気だろう?聞いてみる。


「何処に連れて行く気だい?」


「家に来て欲しくて」


 え?ちょっと待てよ、二ノ宮の家は、海龍寺家の隣のはず。今、向かってるのは反対方向の駅の前を通りすぎた街中。例のタワーマンションがデーンと建ってる場所の方に向かってる。そして、二ノ宮は当たり前のようにその前で止まった。


「まさか、このタワマンの住人なのか?」


「そうよ」


「海龍寺家の隣の家は?」


「あれはママの実家よ。愛良は、伯母さまにピアノとお茶とお花を習っていたの、この間まで」


「君は?」


「私は、愛良から習うから良いのよ」


 意味が分からなかったが、二ノ宮の家族はここで暮らしているという。しかも最上階だ。何者だよ。


 エントランスで、帰宅を告げていたのと、僕の来訪を告げてあったので、二ノ宮のお母さん?が玄関で出迎えてくれた。


「和音さん、ママはいる?桜庭君を連れてきたの」


「ああ……例の……」


 僕には、分からない会話をしてる。


「上がって」


 スリッパを用意されて、室内に促された。


 広いリビングだ。

 高層だから、目の前を遮るものは何もない。


「ママ~~ 桜庭真生君よ~ 連れてきたわよ」


 二ノ宮の口から、ママと言う言葉が今出てると言うことは、さっき玄関で出迎えてくれたのは、お母さんじゃなかったんだ。

 でも、愛良のお母さんのことは覚えてないな。いたっけ?


 その時、奥の部屋から「ブギャー!!」

 と言う雄叫びが聞こえてきた。


 僕は、窓が真正面に見えるソファーに座らせられて、紅茶を出されていたんだ。

 思わず、吹き出しそうになった。


「ママったら、またアイデアに詰まったのね?」


「二ノ宮のお母さんは、作家か何か?」


「知らないかな? 『華麗なる遺産相続人シリーズ』の脚本書いてる蒼海麗そうかいれいよ」


「はあ!? 蒼海麗!?あのミステリー仕立てのドラマの?」


「知ってたら敬え!!」


 ボコっと頭を何か、重いもので叩かれた。

 誰だよ!?こっちに来てから、良くどつかれるなったぞ。


 振り向くと、髪がボサボサに乱れたピンクのスウェットを着たおばさんが、ノートパソコンを持って僕の方を見ていた。


「マリエに、こっちに送らせたぞ。お前のパソコン」


 僕はビックリした。おばさんの持っているのは確かに謙さんのお古のノートパソコンだった。








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