第14話  「アーリャ」

 タイトルは、『桜散る中』だった。

 拍手喝さいの内に劇は終わり、入学式も終わった。

 教室に戻る時に、演劇部の人達も一緒に戻って来た。片付けは後回しのようだ。


「アーリャ、今日の出来は何点だ?」


「亜美ちゃんのは、もっとタケルに対して、積極的になっても良いと思うわ。七十五点ね」


「う~ん、まだ迷いがあるのよね~?」


 一番後ろから、来る演劇部だったという奴らの会話が聞こえてきた。

 僕は、堪らなくなって、どうしてあのノベルが演目になってるか聞きに言った。


「どうして、あの『桜散る中』が、演目になってるんだよ!?」


 三人の男女が、僕を見て止まった。


「気に入ったからに決まってるわ。でも脚本が下手なのよ。 だから、あれくらいのものしか出来なかったわ」


 愛里ちゃんが、僕の顔を見上げると盛大な溜息をついて言った。


「愛里ちゃん……? なんで? アーリャなのさ」


「アメリカで、隣に住んでた人達に可愛がってもらったの。その人たちがロシア系のアメリカ人だったのよ。だから、アーリャよ。愛良は桜蘭の中学にはいなかったし……周りのみんなもそう呼ぶわ」


「愛良と区別が出来ないよ。愛里ちゃん」


「そうなのね?


 その瞬間、僕も彼女の呼び方を変えた。


「分かったよ、


 僕としては、双子の決定的な分け方をする必要があると直感的に感じたんだ。

 幼馴染みの愛良。

 クラスメイトになった二ノ宮愛里。

 そして僕は、二ノ宮のほうと関りを持っていくことになる。

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