第13話 ズッコケる僕
入学式は、滞りなく終わった。
新入生代表の言葉は、心臓が飛び出るほど緊張したが、僕の元居た中学の様に大人数はいなくて、本当にこじんまりした学校なんだ……。と思ったら、安心することが出来たんだ。
舞台から降りるとき、生徒会役員が横の列の横側に座っていて、先頭に兄貴がいた。兄貴は右手の親指をたててウインクした。後ろには馨さんもいる。あの人も生徒会役員だったのか……?
危うく階段を踏み外しそうになりながら、A組の席まで戻ったよ。
「では新入生の皆さん、ここからは去年全国大会まで行った、中等部卒業生の演劇部による観劇でお楽しみください」
兄貴の声で舞台の緞帳が下がった。
裏では、ガヤガヤと人と物を動かす音がしばらく続いた。
「ビーーッ」というブザー音と共に緞帳が上がった。
桜の木をテーマにした作品なのだろう
舞台の正面に多いな桜の木があった。桜の花びらが風に舞っている中一人の少年が、やって来た。向こうからは、少女がやって来て……。
このシュツエーション? どこかで見たことがあるけど……。
男の子の方が、告白して女の子は頷く。
これは……。これは……。僕の書いたライトノベルじゃないのか?
僕が立ち上がりそうになった時に、隣のクラスの後ろの方から、
「見えないわ」
と、声が飛ぶ。愛良だ。
内容は、違う……ところどころ変えてあった。
主人公が告白してるところから始まってるし、登場人物もこんなにいないはずだ。確かにレベルは高いのかもしれない。僕は舞台演劇のことは何も知らないけれど、大根な子はいないし、完成度は高いんじゃないかな。
なんであの物語が、こんな所で見る羽目になるんだよ
最後に愛里ちゃんにスポットが照らされ、原作にはないヒロインの台詞が語られた。
「何度、生まれ変わっても、私はこの桜の木の下であなたを待つの――」
あれがこうなるのか、ってアレンジの仕方だ。
僕は、思わず椅子からずり落ちそうになっていた。
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