第8話  海龍寺家にて……

 愛良とは、家が隣なので二ノ宮邸の前で別れた。

 この坂の一番高い位置に純和風建築の海龍寺邸はあった。

 改築がされてたようで、昔の重苦しい雰囲気はなかった。

 が、インターホンを押して到着を告げると、我先にと二人の人物がやって来た。

 一人は兄貴だ。昔の面影があるから分かった。もう一人は誰だ……?


「待ってたぞ!! 真生。これからは、いっしょにアオハルしようぜ!!」


「ちょっとはじめ君、言い方が、クサ過ぎてダサいわよ」


 久しぶりに会う兄貴は、黒髪の短髪女の子に注意をされていた。

 僕は知らない人なので、自己紹介をした。


「今日から、当分お世話になる桜庭真生です。親父が来いっていうから来たけど、僕は地元の高校でも良いと思ってるんで」


「あなたの澤田馨さわだかおるよ。あなたが、母親の姓を名乗るってるように私も母の姓を名乗ってるの」


 背が百六十五センチの僕と同じ目線だ。

 義姉!?

 僕は、兄貴の方をチラリと見た。


「親父も再婚してたってこと?」


 大声で怒鳴ってしまった。

 知らなかった。未だにマリエがゴンちゃんなんて連絡してるものだから。


「まぁ、政略的な意味合いの多い結婚ではあるがな。お義母さんは、尊敬できる人だし、馨は俺の初恋でもあるからな」


 やっと兄貴が話してきた……。と思ったら、ケロリと恥ずかしげもなく初恋のことを語りだす辺り、昔と全然変わってない!! だいたい五月生まれの兄貴より年上なんて、四月生まれでしかあり得ないじゃないか。


「家は相変わらず……?」


 僕は、心配になって聞く


「ん?みどりお義母さんが上手くまわしてくれてるぞ」


「じゃなくて……新しいお義母さんは祖母さんと仲が良いの?マリエは散々、外人の血が流れてるだの、海龍寺家の血を汚したっていびられたじゃん」


「それな!!みどりさんに連れ子がいることで口を挟んできた訳よ。親父も二度も同じ轍は踏むまいと思って、気候の良い土地のご同輩のいるところに入って頂いたよ」


「じゃあ、あの人はここにいないんだ……」


 僕は、肩の荷が半分降りた気がした。


「ばあさんのいびりは、マリエと真生に集中してたからな」


 僕は頷いて、兄貴の腕にがっしりと飛び込んでいった。。

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