第7話  幼馴染みの愛良

 二ノ宮愛良こと愛良は、僕がまだ海龍寺姓を名乗っていた頃からの幼馴染だ。海龍寺邸の隣の素敵な洋館に住んでいる。

 海龍寺の家が、古くさい日本家屋で、古くさいしきたりを重んじてたババアが、取り仕切っていたこともあり、隣の洋館から聞こえてくる愛良の笑い声は、僕にとっては、とても羨ましいものであった。


 八年ぶりにあった、愛良。確かに顔はさっきの子と瓜二つだが、ギチギチの三つ編みに眼鏡まで駆けていた。


「良く僕が分かったね?」


「明日辺り、来るって聞いてたもの」


 唐突の僕の質問に、愛良はクスクス笑って答える。


「それに……。」


 さらに続けて、愛良は言う。


「自覚はないのでしょうけど、二年前のいち兄さんとそっくりなのよ」


「兄貴と!?」


 兄貴のはじめとは、二つしか違わない。小さなころは、そんなに似てると言われたことも無かった。

 それより、聞いてみる。電車で見かけた小柄なそっくりな子について。

 愛良はあっさり、妹の存在を認めた。


「愛良は、年の離れたお兄さんがいたんじゃなかったっけ?」


「それ、何処情報よ。わたしは三人兄弟の長女よ。年の離れた弟ならいるわ」


 相変わらず愛良は、僕の情報量の少なさと勘違いにクスクス笑いが止まらないようだ。

 でも、顔のパーツは良いのにこんな、キツキツの三つ編みに眼鏡なんてダサい格好をしてるんだろう。


 歩き始めて、僕は不躾なほど愛良を見ていたらしい。


「言っておきますけど、校則なの。お嬢様学校の中等科なんてこんなものよ」


「妹さんとは、幾つはなれてるんだい?僕らが、幼稚園の時も小学校に上がってからもいなかったよね?」


「あら、愛里はあなたにアメリカ帰りだと言わなかったかしら?」


 僕は、ドッキン!!確か、言った!!五歳からアメリカに行ったと……。


「言ってたような……」


「名前で分かるでしょう。愛良と愛里。双子よ私たち」


 僕は、ますます混乱したよ。

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