第5話 電車の中の出会い
最寄りの駅までは、後五つ。昼間の時間で座席はまあまあ空いていた。
僕は、入り口近くの空席に腰を下ろすと、リュックから、タブレットを出すと、保存してあったページを出した。
これが賞を取るだけの価値があるとは思えなかった。
僕は自分で書いたライトノベルの世界にしばしトリップした。
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タケルの行きついた先は、告白をしない選択だった。高校一年の運動会の後に雫を、体育館の裏に呼び出して、告白したのだ。そして付き合うことになった。だから、十年前に戻ったタケルは、体育館の裏へは行かなかった。そのまま帰宅したのである。
桜散る中 ―― 僕は舞い戻るより (原文)
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最寄り駅まで、あと二つになった時、四、五人の中学生らしい賑やかな集団が乗車してきた。
話題の映画の話の感想が、漏れ聞こえてくる。
……中学生と思ったが、高校生か?聞こえてくる内容が、「あの監督のあの見せ方は賞賛に値する」とか、「美術も細部まで凝ってたわね」
等々……。僕は、呆れてその集団を見てしまったんだ。
その時に、電車は急ブレーキがかかり、僕のタブレットは、床に転がり落ちてその集団の足元で止まった。
慌てて、取りに行く僕。
タブレットを拾ってくれたのは、立って映画の評論をしていた高校生らしい人たちではなく、ただ一人座っていた小柄な女の子だった。
「小学生もいたのか?」僕が勝手に思っていると、少女は、僕の顔をジッと見ていた。(しまった!!)
間違えなく僕の目を見ている……。僕は咄嗟に謙さんにもらったサングラスをかけたんだ。
少女は「あらら……せっかくイケメンなのに勿体ない」と呟いて、タブレットに目を落としていた。
「知ってるわ、このノベル。作者は桜庭まお?まい?」
「
「あっ!!はい、これね。似合ってないわよ。サングラス」
百五十センチほどの身長しかない美少女だったが、腰までのストレートのさらさら髪が印象的であった。そして不思議な既視感におそわれた。
「もしかして、会った事がある?」
僕は言う。
「いいえ。わたしは、11歳までアメリカにいたの。会うのは初めてのはずよ」
少女は全力で否定してきたが、「なんか意味深な言い方だな」と思った。
記憶がよみがえる。
少女は、僕の良く知ってる子にソックリだったのだ。
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