第4話 情けない出発
『大学は、T代の経済学部以外は許さん!!兄の
鼓膜は破れるかと思うほど、興奮して親父は言ってきた。
「こっちの学校の卒業式もあるし……」
『行ってないんじゃなかったか……?』
僕は、言葉に詰まる。
それでスマホを、母のマリエに渡してしまった。もうこれ以上親父と話すことは無い。
マリエは、一言二言親父と話して僕にスマホを返してきた。
マリエはニッコリ笑って、言った。
「
「送ってくれないの?覚えてないよ。住んでいた町の事なんて」
だいたい七歳までしか住んでいなかった。良い思い出のある家でもない。
「東京までは、いっしょに行くわ。でも、後は一人で行くのよ」
本当は泣きたい気分だった。
ずっと、ずっと、この生活が続くものだと思っていたから……
でも、マリエにとっては期限付きで親父と離婚した後も、恋人は作っても結婚はしなかったのは、俺が謙さんとの生活に邪魔だったからだと思うと、無性に謙さんが憎らしくなった。
手なんか出したことのない僕が、いきなり謙さんに向かってなぐりかかっていったのだ。謙さんはボクシング経験者。
反射的に、カウンターが僕の腹に飛んで来た。
僕は目の前が暗くなった。
次に目が覚めると、僕は東京に向かう車の中で寝かされていた。
マリエの言うに、「僕があんまり情けなくて、東京駅で迷子になるのが目に見えているから、最寄り駅の乗換駅までは送る」という最大限の大譲歩をしたらしい。マリエにとっても嫁いびりされたババアの住んでる家になんて近付きたくもないんだろうな。
「
涙でマリエが見えないよ。
僕は、パーカーの上にダウンを羽織り、車を降りた。
「まあ坊!!」
謙さんが僕を呼び止める。
「悪かったな。つい反射で手が出ちまった。大丈夫か?」
「ううん、謙さん。僕こそ、御免なさい」
謙さんは、安心したように運転席から僕を見た。
そして、
「その顔はひどいな……これを持って行けよ」
と有名ブランドの黒いサングラスを渡してくれた。
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