第36話 担任からの電話
翌日、修学旅行は2日目。次男は尾道へ登山をしに行ったらしい。
その午後3時ごろ。私の携帯に見知らぬ番号からの着信があった。出てみると、次男の担任の先生だった。
「次男君ですが、いつもの腹痛でちょっと歩けないような状態になりまして。」
なんと!もう治ったと思っていたのに。そして、
「同行しているナースの見立てでは、病院に行く程ではないという事なので、このまま旅行を続行したいと思います。」
と言われた。少しホッとする。だが、歩けない程というのも、ちょっと心配だ。とはいえ、このまま続行してもらう方がいいので、それで電話を終えた。
ところが2時間後くらいだろうか。また先生から電話がきた。
「事情が変わりまして。次男君が新幹線の中で吐いてしまって、明日の日程をこなせそうもないので、明日の朝10時までに迎えに来ていただきたいのですが、迎えに来られますか?」
2泊目は新大阪駅の近くのホテルだった。迎えに来られますか、と聞かれてノーとは言えない。渋々はい、と答える。ホテルはサービス業だから多少遅れても大丈夫だと思うが、一応チェックアウトは10時までだから、という話だった。他の生徒はもっと早くにホテルを出てしまうのだそうだ。
いやー、これは想定外。数か月前にはコロナがもっと流行っていて、修学旅行説明会の話では、もし同室者にコロナ患者が出たら迎えに来てもらいたいという事だった。その場合、公共交通機関は使えないので、広島や大阪までどうやって?と頭を悩ませたところ、夫が、
「新幹線で行って、レンタカーで連れて帰ってくればいいよ。他の同室者も一緒に乗せてくれば、レンタカー代をみんなで負担できるでしょ。」
と、事も無げに言ったのだった。そうか、レンタカーは向こうで借りてこっちで返せるから。すばらしい!ペーパードライバーの私には全く思いつかないし、思いついても無理な方法なのに。
で、その場合夫が迎えに行くわけだし、その他に迎えに行くなんて事はないと思っていた。ただ、産婦人科の予約を入れる時に、帰ってくる日に入れると、万が一迎えに行く事になったらまずいかな、と一瞬頭をよぎったのだった。けれども、まさか大阪まで迎えに行くとは思わず、せいぜい駅まで迎えに行くだけだろうと思い、それなら夕方遅くだから、午後2時の予約を入れても大丈夫だなと思ったのだった。つまり、予約を入れてあるのだ。
それで、まさかの大阪までのお迎え。コロナじゃないので、帰りも新幹線で連れて帰って来られる。という事は、夫が会社を休んで行く必要はなく、私が行くべきだ。
その先生からの電話があった時には、ちょうど夕飯の支度をしていた。この日はコーラスの練習が夜に入っていて、早めに夕飯を食べてから行こうと思っていたのだ。
さて、明日の朝10時までに新大阪へ行く場合、何時ごろの新幹線に乗ればいいのか。調べた。おう、早い!早く準備をして寝なければ。いや、洗濯してからか。夜に出かけている場合ではない。ということで、コーラスの方は欠席連絡をした。しかし、アタフタしても仕方がないので、まずは作った夕飯を食べようと思った。
さあ、食べようとしたところ、また先生から電話が。今度はナースが私と話したいという事だった。そう、先程の電話の時に、腸閉塞になった時の事を考えると、連れて帰るのが無理な場合があるので、その場合はそちらの病院へ連れて行ってもらう必要があるという話をしたので、それについてだった。
先生はナースと電話を代わった。吐いたという事だが、乗り物酔いではないのか、と聞くと、お腹から変な音がしたりして、明らかにお腹がおかしいので、ただの乗り物酔いではない、という事だった。ああ、あれね。あの音ね。
もちろん、私もただの乗り物酔いだとは思わない。だが、お腹が痛い事と、吐いた事とは別なのでは?と思ったのだ。お腹が痛くて吐いたのなら、それはもう腸閉塞だが、吐いたのは乗り物酔いで、腹痛とは別の事だったら、閉塞まではしていないかもしれないと思ったのだ。だが、電話はブツブツ切れるし、もういいやと思った。
何も食べない方がいい、という見解を一致させ、明日の朝歩けないようなら大阪の病院へ、歩けるなら東京に連れて帰るという事で同意して、電話を終えた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます