第34話 部活に復帰

 高校3年生の次男。時は5月上旬。入院前よりも体重が10キロも減ってしまった。食事も摂らずにほぼ寝ていたのだから、筋肉はすっかり落ちてしまい、運動なんてしばらく無理だと思われた。

 部活の引退試合が近づいていた。中学からバレー部に入っていた次男は、今キャプテンで背番号1のエースアタッカーだった。まあ、あまり強い部ではないのだけれど。

 でも、病気をしてしばらく休んだので、もうこのまま復帰できずに引退かと思われた。だが、そうではなかった。あまり食べられなくとも次男は部活を頑張った。半月ほどで運動能力をほぼ戻した。体が軽くなった分、筋肉が少なくても高くジャンプができるらしい。

 しかしコロナめ……。公式戦を私が観に行く事はとうとう出来なかった。息子の活躍を見るのが何よりも楽しみだったのに。それも、大抵試合に出してもらえるかどうか危ういのが常だったのに、高校時代の次男は、常に試合に出続ける人になっていたのだ。自分の息子がエースとして活躍するのを見るのは夢だった。それなのに。

 ま、恨み節を綴っても詮無い事。私は観に行かれなかったが、次男は引退試合に出場する事が出来たのだった。

 その試合の日。負けたら引退、という重要な試合は、何と修学旅行の前日だった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る