第29話 柔らかい物

 めでたく退院した次男。帰りの車の中で、

「何なら外でうどんが食べたい。ラーメンでもいい。マックでもいいよ。」

大丈夫なのか?過食症になっていないか?ちなみに、朝ごはんの写真も見せてくれた。食パン1枚に薄切りハム4枚、キャベツ、キュウリ、ニンジンのマヨネーズサラダ、牛乳。わあ、長男の食べられないものばっかりだ。ハム以外アウトだった。でも、次男にとっては好物だ。量的には、寝起きならばちょうどいい量に見えるが、5時起きなのに朝食が8時で、起きてから3時間後の食事にしては物足りなかったようだ。ハムが4枚もあるじゃん、と言ったら、それはうっすいハムだったそうで。

 結局、あんなにヘルシーな病院食の直後にいきなり外食はよくないから、お昼は家でお父さんのパスタにしよう、という事になった。

「なら、俺の好きなミートソースとか?」

はい、リクエスト来ました。夫がミートソーススパゲティを作ってくれた。最初は少しずつよそっていた次男も、結局普通にたくさん食べていた。やっと美味しい物が食べられたわけだ。

 しかし、律儀に「柔らかい物」を食べようとして、はじめは硬め(というかアルデンテ)だったパスタを、少し時間を置いてふやけてきて柔らかくなってから食べていた。油だろうが肉だろうが平気だが、先生に言われた通り、硬い物は食べないようにするらしい。歯でよく噛めば、その点は大丈夫のような気がするけれど……しばらくゴボウとかタケノコはやめておくかね。

 ところが、食べ終わってしばらくすると、次男はお腹が痛いと言ってきた。

「やっぱりパスタは辞めておけばよかった。」

と、涙目になって言う次男。油はきついそうだ。なかなか一筋縄ではいかないものだ。先が思いやられる。

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