第12話 検査結果

 町医者とは違い、大きい病院は検査結果がすぐに分かる所がいい。血液検査の結果ももう出たようだ。

 私も処置室に呼ばれ、先生の机のパソコン画面を見るように言われた。血液検査の結果の数値を見せられても良く分からないが、この数値は腸に炎症を起こしているという事らしい。そして画像を見せられた。

「腸が不自然に並んでるでしょ?平行に。」

と言われても、どれが腸だか……。

「こっちの方が分かりやすいか。これ、断面なんですけど、この黒いのが腸です。普通の人のはもっと細いの。腸がパンパンに膨らんでるんです。」

なんと、お腹がパンパンに?

「腸閉塞ですね。盲腸も腫れた跡があるので、ひょっとすると虫垂炎もあるかもしれません。明日、消化器内科の先生に引き継ぐので、よく診てもらいましょう。とにかく、2~3日腸を休ませる必要があるので、入院になります。」

と、先生は言った。次男もその画像などを見ていて、振り返ると笑顔が。ああ、久しぶりの笑顔。

「良かった、少し元気になってる。」

しかし、先生。

「今は痛み止めが効いているだけです。」

だそうだ。

 今から処置をするという事で、私は処置室から出る事になった。

「また会えますよね?」

と聞いた私。本人にスマホとか色々渡しておく物があるから。すると先生は、

「まだ会えますよ。病室に入ったら面会できないんですけど。」

はぅ!私と次男は顔を見合わせた。さ、寂しい。そうか、コロナのせいで、入院すると家族も面会できないのか。毎日来て会えるものとばかり思っていた。入院させて欲しいなんて思っていたのは、そう思っていたからだ。でも2~3日なら大丈夫。そのくらいなら、修学旅行とかでよくある事だから。病気の次男にとっては、元気で留守なのとは全然違うだろうが。

 廊下に出て、病院に残していく物と、持って帰る物とを分け始めた。体操着や部活の練習着、制服のブレザーとネクタイ、お弁当は持って帰ると。できれば勉強道具はリュックごと残してあげたい。ああ、今日に限ってエコバッグを持ってこなかった。仕方がない、練習着は巾着袋に入っているからそこに体操着も入れ、それと、お弁当バッグと、空っぽのシューズ入れに制服とかを入れて持って帰ろう。夫に来てもらう事にしてよかった。

 そう思って作業を始めたが、シューズ入れは汚いので、制服ではなく体操着の方を入れようと思った。入れ替えようとして、体操着などをシューズ入れに詰めていたら……あれ?紐が……切れた?

 シューズ用の巾着袋の紐が切れ、片方がもぐってしまった。ゴム通しなどの道具がないともう、どうしようもない。これでは、これに入れて持って帰る事が出来ない。あちゃー、やっぱりリュックを持って帰る事にしないとダメだな。

 というわけで、持って帰る物をリュックに入れ、置いていく物を練習着用の巾着袋に入れ直し始めた。その時、処置室から次男のオエッ、オエッとやっている音が聞こえた。そう、先生が先程、

「ちょっと苦しいんだけど、鼻からチューブを入れて胃の圧を抜きます。」

と言っていたのだった。それを今やっているのだろう。うわ、可哀そうに。

 処置が終わったようで、次男が車いすに乗ったまま出てきた。あ、まだ詰め替えが終わっていない。次男は、

「お弁当と体操着を出して、リュックは置いて行って。」

と言う。ああ、さっきまで笑っていたのに、何だかげっそり。いや、げんなり?

「ごめん、持って帰る為にリュックが必要なのだよ。この巾着に必要な物を入れて。」

私は、ナイロン製の弱っちい巾着袋にスマホや財布、教科書類、筆箱を入れた。

「後は?必要な物ある?」

リュックの中を見せ、ルーズリーフとか、iPad(全員に持たされているレンタルもの)とか、次男が必要だと言う物をあれこれ出したら、結局巾着袋には入り切らなかった。車いすなので、膝の上に溢れ返った物を抱え、そのまま病室へ連れて行ってもらう事になった。車いすを押してくれている看護師さんをお待たせしてしまった。やれやれ。

 次男はパジャマに着替えさせられていた。制服のズボンをその看護師さんから返され、

「ワイシャツ、汚れてしまいました。すみません!」

と、ビニール袋に入ったワイシャツも渡された。

「とんでもないです。」

と、私は言って受け取った。吐いたものが付いたのかと思っていたが、後でよく見たら、血液だった。それが、点々とではなく、かなり広範囲に薄く付いていた。

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