第23話 重なる

 俺の肩に頭を置いてすやすやと眠りにつく葵ちゃん。

最近あまり寝れていないということも相まってか、かなり熟睡しているようだった。


 俺はそのまま携帯で寝顔をぱしゃっと撮り、ロック画面の写真にしようかななんて考えていた。


 そうして、2時間ほどかけて目的地に到着するのだった。


 そこは温泉が有名な観光地であり、平日にも関わらず駅にはそれなりに人がいるのだった。


「よし、ひとまずホテルに行って荷物預けよっか」


「分かりました!」と、にっこりと笑う。


 少し不安が取れたこととゆっくり寝たおかげでだいぶ元気になったようだった。


 そのまま駅近のホテルに荷物を預け、携帯を見ながら観光地の地図を確認する。


「んー、どうしよっかー。行きたいところある?」


「うーん。悠人さんと一緒ならどこでもいいですよ?」


「それを言われちゃうと結構困るな」


「じゃあー、そうですねー。では、この美術館はどうですか?」


「おー、いいじゃん。美術館結構好きなんよ」


「本当ですか!じゃあ、ここにしましょう!」というと、そのまま俺の手を握る葵ちゃん。


 そんな当たり前の恋人みたいなやり取りに思わず心が躍る。

そういえば、夫婦になったのに俺たちはまだちゃんとデートもできていなかった気がする。


 バスを乗り継いで美術館に着くと、人はまばらにしかおらず落ち着いて見ることができた。


 幻想的な絵や、一風変わったオブジェに、かわいい猫の置物。


 作品から伝わる人の熱量を感じながら、一つ一つの作品をじっくり眺める。


「あ、悠人さん!この猫さんと私のツーショット撮ってくれませんか?」


「お、いいね。じゃあ、そこに立って」


「はい!」


 小走りで近づいて、猫の横でピースする葵ちゃん。


「とるよー。はい、チーズ」


「撮れましたか?」


「うん。いい感じだよ?」


「じゃあ、次は2人で撮りましょう」というと、得意じゃないだろうに近くに居た人に声をかける。


「あ、あの...写真お願いできますか...?」


「大丈夫ですよ」と、優しそうな夫婦がそう言った。


 そうして、手を繋ぎながら2人でピースする。


 どこか照れ臭くてすこし顔を赤める俺。


 しかし、どうやら葵ちゃんの方も同じ気持ちだったらしく顔を赤らめながら笑う。


「はい、では撮りますよー。はい、チーズ」


 それから他の観光地を巡り、美味しい海鮮丼を食べて、ホテルに戻るのだった。


 ◇


「うわ、すごくいいお部屋ですね!」


【挿絵】

https://kakuyomu.jp/users/tanakamatao01/news/16818023214191761281


「ここが7,000円とかだいぶ安いよね。びっくりした」


「ですね。あっ、お風呂も広いです!...2人で入れちゃうかもですね」と、いたずらに笑う。


「...入っちゃう?」


「...え?ほ、本当にですか!?//」


「いや、冗談だけど...」


「むぅ!!」と、背中をバシンと叩かれる。


「いたっ!」


「ご、ごめんなさい!強く叩きすぎました...」


「いや、大丈夫w葵ちゃんもちゃんと怒れるんだね」


「そりゃ...怒りますよ。期待しちゃったんですから...」


 そうして2人で見つめ合う。


「...葵ちゃん」


「...悠人さん」


 そのまま唇を合わせるのだった。


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