第18話 同級生
「ちょっと、大丈夫?」と、店長に声をかけられたことで我に返る。
「あっ、はい...」
「...あんた、あの2人のこと知ってるの?」
「...えっと...まぁ...」
「...そう」
「...店長さんも知ってるんですか?」
「えぇ。よく知ってるわ。どっちも中学の時の同級生よ。女の方は
やばい。これは非常にやばい。
もしかして、復讐心で何かされるのではないか?と思い、私はバックヤードを飛び出そうとするが、その手を掴まれる。
「は、離してください!」
「待ちなさい。あんたのこと、返すわけには行かなくなったわ」
「や、やめ!」と、騒ぐ口を無理やり抑えられる。
そうして、また私に恐怖が襲う。
そのまま目に涙を溜める私に店長は続けた。
「...安心しなさい。あんたの様子見てたら分かるわ。あいつらに酷い目に遭わされてきたんでしょ?今飛び出せばあいつらに見つかるかもしれないわよ」
「...」
すると、すぐそばから馬鹿みたいな声量で話す2人の声が聞こえてくる。
「121〜」
「121番っすねー」
「ねー、ゴムまだ家にあったっけ〜?」
「しらなーい。まぁ最悪、中でもいいよ。今日安全日だし〜w」
「マジ?最高かよw」と、下品な話をしながらケタケタと笑う。
「あっ、そういや、最近ここら辺で葵のこと見たって奴いたぞ」
「マジ?あのパシリ早く見つけないと。いなくなっていた間の金は風俗にでも行かせて稼がせるかなー。あいつ、私に似て顔だけはいいからねー」
「だよなー。マジ昔の真澄って感じだしー。あーやりてー」
「あんたには私がいるでしょ」
「お前とはもうやり飽きたんだよ。あの子処女だろ?初めて奪ってやりてーじゃん」
「サイテーww」
その会話を聞きながら私はダラダラと汗を流して体は震えていた。
私はここにいちゃいけない。
早くこの場所から抜け出さないと...。
荒くなる心臓の鼓動と、溢れ出す涙。
「...あんたも相当大変な人生を歩んできたみたいね」と、悲しそうにそう呟く店長。
そうして、それならすぐに2人は店を抜けていった。
そのまますぐに店長は私から離れて、手を差し出す。
「立てる?」
「...はい」
「...もしレジに立ったらいつかあいつらに鉢合わせするかもしれない。だから、レジとしては採用できないわ」と、店長が言う。
いや、元々ここで働くつもりなんてなかった。
早くここから離れたい。悠人さんに会いたい。
抱きしめてほしい。それしか頭になかった。
「...けど、レジの他に裏方の仕事をやってくれる子を探してたのよ。バックヤードのお仕事と、あとは事務の仕事ね。そっちなら表に出る必要もないし、あなたにもできると思うけど。やってみる気はない?って...今すぐ返事はできるわけないでしょうし、家に帰ってから...ゆっくり考えていいから」と、店長さんは私に一枚のメモを手渡した。
そこには携帯電話の番号が書かれていた。
「...何かあったらいつでも連絡しなさい。力になってあげるから」
「...」
そうして私はその髪を握りしめながらコンビニを後にしたのだった。
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