第17話 目撃
バイトの面接を受けるべく、私はコンビニに向かっていた。
少しでも悠人さんのためになればと思い、自分なりに色々と探していたわけだが、まだ少し不安も残っているた。
近づくたびに重くなる足を無理やり動かした。
途中何度か振り返り、来た道を戻ろうかと悩んだ。
きっと引き返したとしても、そんな私のことも悠人さんは温かく迎え入れてくれるのだろう。
だけどもこれは悠人さんと一緒にいるためにこれは必要なことなんだ、となんとか言い聞かせて荒くなる呼吸を抑えながら、コンビニに入る。
そして、レジの人に「あの...面接の...」と伝える。
ややプリンになった汚い金髪の若者。
よくいる大学生といった感じだ。
正直一番苦手そうなタイプだった。
「あっ、話聞いてるよー?てんちょー、面接の子来たよー」と、裏に声をかける。
そして、出てきたのはもっと最悪な男だった。
小太りでメガネで少し禿げ上がった頭。
年齢は40前後という感じであり、メガネをくいっとしながらこちらを見つめる。
「まってたよぉ〜。それじゃあ裏で面接しようかぁ〜」と、気持ちの悪いウィンクをしながら案内される。
...万が一受かってもここで働かないと決めながら、とりあえず事務所に入っていく。
「さぁてと、さっそく面接始めちゃおうかしら!それじゃあ、まず履歴書見せてくれる?」
「...はい」
「ふむふむ。ふーん。高校中退したの。そうー。何か学校で嫌なこととかあった?もちろん、答えづらかったら全然大丈夫だけど」
「...上手く馴染めなかったからです」
「あら!私と同じねー。私もこんなんだからなかなか学校で馴染めなくてねぇ〜」
そこでようやく気づく。
この人はオネェだということに。
「ちなみに、うちのコンビニを選んでくれたきっかけは?まさか、レジの
「いや、私彼氏がいるのでそういうのはありません」
「あら?そうなの?それはいい事ねー。職場恋愛なんていざこざしか産まないから」と、強めに頷く店長さん。
どうやら悪い人ではなさそうだ。
「バイトの経験は特になしねー。それで最初は週1〜2で希望ねー。うん。気に入ったわ!あなた採用ね」
「...え?」
「何よー、そのリアクション!面接受けにきておいて受かってがっかりって?」
「あっ、いや、そんな事ないです...。ありがとうございます」
「はーい。いつから働けるの?」
「いつでも大丈夫です」
「そう!それなら明日からお願いしちゃおうかしら!うふふふ」と、満面の笑みを浮かべる店長さん。
「あ、上坂くーん!この子明日から入ることになったから〜!」と、プリン頭のチャラ男に話しかける。
「あ、りょーかいでーす。可愛い女の子はウェルカムなんでー」
「ダメよ!この子彼氏いるらしいから!」と、楽しく会話をしていると、ふと防犯カメラに目が行く。
それはたまたまで偶然だった。
いや、私の中の第六感もしくは直感が働いたのか、すぐにそいつらが目に入る。
思わず瞳孔が開き、体が震え始める。
「ん?葵ちゃん?」という店長の声すら耳に入らない。
冷や汗と油汗と悪寒と恐怖が入り乱れる。
そこに居たのは、相変わらずの若造化粧をして、淫らな服装をした実の母と私を犯そうとした母の彼氏がそこに居たのだった。
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