第16話 日常
「さて、どうしようか...」と、転職サイトを見ながら呟く。
入院していた期間は休職扱いにしてもらい、その上、給与の補償としてもらった。
まぁ、これは口止め料ということなのだろう。
篠田先輩は逮捕されたが、お金で揉み消したのか世間的にはあまり大きな事件としては取り上げられることはなかった。
それでも、会社内の出来事であり、会社の名前には多少傷を負ったが、それでもなんとか会社として保っていた。
それでもあの会社に残るつもりはなかったので、退院後も残っていた有給を全て使わせてもらい、あと1ヶ月と少し猶予をもらったわけだが、あんまり油断していると1ヶ月なんてあっという間だ。
引き締めなければと思いながらパソコンと向き合う。
「いいお仕事ありそうですか?」
「うーん。出来れば残業少なめで休みがちゃんとある会社がいいかなーと思ってるんだけどね。最悪給与は犠牲してもいいかなーって」
「...それって私のためですか?」
「...まぁ、半分くらいは。けど、もう少し自分を大切にしてもいいかなって思ったからさ」
「私も働きます」
「...気持ちは嬉しいけど...。大丈夫?」
「大丈夫です。悠人さんがいない間、川上さんと一緒に生活して、玄太さんともちゃんとお話できましたし、もう大丈夫です」
「...そっか。まぁ、でも週1、2くらいから始めて、ゆっくり慣らす方がいいと思う」
「はい。わかりました」と、言いながら抱きつく葵ちゃん。
その抱きしめた手に手を合わせる。
「ふふふ。最近悠人さん素直になりましたよね」
「そう?...そっか」
「はい。いいことだと思います」と言いながら頭をぐりぐりと背中に擦り付ける。
「悠人さん...大好きです」
「うん、ありがと。俺も葵ちゃんのこと大好きだよ」
「本当ですか?じゃあ、チューしてください」
「...今はちょっと忙しいからダメかなー」と、やや冗談っぽくいうと頬にキスをする葵ちゃん。
「ちゅ、ちゅ、ちゅ、ちゅ」
「あらあらあら、積極的だねー」と、バカップルぶりを発揮する。
「悠人さんって性欲とかないんですか?」
「いや、人並みにはあると思うけど...」
「ふーん。そうですか」と言いながら背中に胸を押し付けてくる。
「ちょっ...」
「男の人はこういう好きですもんね」
「...まぁ、ドキドキはする」
「ふーん。そうですか。ふーん」と、さらにグイグイくる葵ちゃん。
「...あの、転職活動に集中できないんですが」
「今は転職活動より私にむちゃつになってもいいんですよ?」
そのままゆっくり振り返り、肩を手を置いてキスをする。
「んちゅ...//」と、顔を赤くする葵ちゃん。
どうやらそれで満足したようで「せ、洗濯してきます...//」と、言いながら去っていった。
「...こんな状態で集中できるわけないだろ」と、呟く俺だった。
◇
「なぁ、そろそろマジで探したほうがいいんじゃねーの?」
「はぁ...。だる。けど、パシリがいないのはあれだし、探すか。どうせ遠くには行ってないだろうし」
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