第14話 終戦
立っていたのは部長だった。
「...部長」
「もうやめよう、篠田」
「...は?今更何言ってんだよ。もう取り返しなんてつかないでしょ。もうこいつ殺すしかないでしょ」
「...違う。確かに彼の言った通り今のやり取りは全て社内に筒抜けになっていたし、実際に彼は生放送をしていた」
「何も違くねーじゃねーか」
「前者に関してはな。けど、後者に関しては限定公開...つまり一部の人間しか見ることできない設定になっていたんだよ。あのコメントは全て私が書いたものだ」
「...は?」
「いつかはこうなる運命だったんだよ。私も」
「いやいやいや、なら好都合でしょ。生放送されていないならこいつのこと殺して隠蔽すれば」
「お前、本当に馬鹿だな」
「...あ?」
「限定公開とは言え動画は残ってる。その気になればいつでも世の中に発信できる状態ってことだよ」
「...」
すると、部長はゆっくりと両膝をつき、両手を床につけて土下座をする。
「高橋くん...。すまなかった。私は君のことを...見殺しにしていた。篠田のしていたことを知って見て見ぬ振りをした。謝って許されることなんて思ってない。だけど、それでも謝らせてくれ」
「...誰も許す気はないですよ」
「...それでいい」
「おいおいおいおい、何解決しちゃってる感じにしてんの?まだ何にも終わってねーだろうが。いや、何もかも終わったとしたらもう捨てるもんはねー。こいつ殺して全部終わらせてやる」
そう言った篠田の手には傍に置いてあった鋏が握られていた。
そうして、ゆっくり近づいてくる篠田。
まずい。マジで殺される。
その瞬間のことだった。
部長が篠田に体当たりをした。
「いってっ!!」
「高橋くん!逃げなさい!」
しかし、残念ながら俺の体は既にボロボロであり、うまく立ち上がることすらままならなかった。
這いずりながらなんとか会議室を抜け出すと、それと同時に警察が突入してくるのだった。
そうして、無事篠田は逮捕された。
その後、篠田には暴行罪のほか、今までの悪行全てを部長が告白したことで、そのほか数名が逮捕されたが全て内内で処理されることとなり、世の中に知れ渡ることはなかったが、それはまた少し先の話である。
俺はそのまま救急車に運ばれ、病院に搬送されたのだった。
命をもかけたこの大博打。
どうやら結果は成功に終わったらしい。
今日の出来事とこれからのこと、いろいろ話をしようと葵ちゃんに連絡を入れる。
すると、乱暴に病室の扉が開く。
そこには玄太と川上が立っていた。
「お前...無茶しやがって」
「...」と、ただ無言で涙を流す川上。
「...心配かけたな」と、俺はブサイクに笑うのだった。
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