第13話 嘘と嘘
そのまま首根っこを掴まれ、会議室に引き摺り込まれる。
「またお得意の暴力か?相変わらず一辺倒だな。篠田和樹」
「あ?」
「いつまでもお前に尻尾を振ってると思ったら大間違えだぞ」
「お前何調子乗っちゃってんの?」と、至近距離に近づく。
今までの恐怖心なんてそんな簡単に拭えるわけがない。
それでも俺は...。
「調子に乗ってんのはお前だろ。川上に無理やり迫ってキスして胸を揉んだことだけじゃない。今までのこと全てひっくるめて裁判してやるから楽しみにしとけ。俺が今までずっと大人しくしてたのは証拠を集めるためだってことにも気づいてなかったバカが」
「...お前」と、胸ぐらを掴む。
「今すぐにここで土下座してこの会社を辞めるって言うなら許してやる。どうする?」
「ぁ?てめぇ、最近調子乗りすぎなんだよ」
「それが答えか?」
「そうだな。川上より前にお前を潰さないとな。すまんすまん。忘れてたよ。二度とそんな口を聞けないようにボコボコにしてやるよ」
「はい、お疲れ様。今の会話全部部長に聞こえてたんだよ。お前本当にバカだろ」と、携帯を掲げる。
その瞬間、やや目を大きくし、鼻で笑う。
「バカはお前だろ。あいつは俺の息がかかった人間だって気づいてないのか?」
「...」
「さて、言いたいことは終わりか?じゃあ、一生逆らえないようにボコボコにしてやるよ」
「やっぱお前バカだろ」
「あ?」
「誰が部長だけが聞いてるって言ったんだよ。俺はここに来る前に会社のパソコンのzoomとこの携帯を繋げておいたんだよ。勿論、スピーカーモードにしてな。つまり今の会話も全てひっくるめて会社全体に伝わってんだよ」
「なっ!?」
「確かにお前の息のかかった人間も数人いるんだろうけど、そうじゃない人間だってこの会社にはいくらでもいるんだよ。さて、どうする?今からここで土下座すれば俺は許してやってもいいぜ?けど、会社の人間はどうかな?」
「...そうか。その程度で勝ったつもりか。頭お花畑もそこまで行くと笑えないな。俺の権力はその程度の問題を簡単に揉み消せるんだよ!」と、構わず俺を殴る。
「ぐっ...!」と、俺はその場に倒れ込む。
そして、そのまま馬乗りになって殴り始める。
「おらぁ!どうした!こんなもんか!!」
俺はひたすらガードに徹する。
そのガードの上から何度も殴る。
重くて鋭い痛みが腕を襲う。
そうして、そのパンチはいよいよ俺の顔面にも衝撃が伝達する。
鼻血が溢れる。
「おらぁ!おらぁ!」
そうして、ボコボコになった俺はガードを外す。
「ようやく観念したか、クソが。お前もお前の彼女も川上も全員ぶっ殺してやるからな」
「...ぉ前...やっぱバカだろ」
「あぁ!?」と、もう一度拳を振りかざしたところで俺はテレビの近くに置いているノートパソコンを指差す。
「あのパソコンが何だってんだよ」
「...ぉ前に命令されて、You◯ubeでもうちの会社の商品の紹介してるのは知ってんだろ。意外とチャンネル登録者が多くてな。今は1万人超えてるんだぜ」
「何言って...」
「この会社は確かにお前の息のかかった奴がたくさんいるんだろうな。けど、世間的に見ればお前の存在なんて井の中の蛙...いや、馬鹿の中のクズでしかねーんだよ。さてと、どうするよ、東京都新宿区住みの篠田和樹、31歳さんよぉ」と、改めてこいつの情報を言い放つ。
「くそが!」と、そのままパソコンに向かって走り始める。
俺は知っていた。
こいつがいじめをするときいつもこの会議室を使うことを。
この会社の誰かに訴えても変わらないことを。
全ては作戦通りだった。
「もうおせーよ、ばーか」
おそらく画面には無数のコメントが流れる。
勿論、他のアカウントでこの生放送は録画をしていたので一生消えることはない。
「お前の名前も顔も年齢も住所も悪行も全部全部インターネットに乗っちゃったけど、まだ味方してくれる人居るといいなw」と、鼻血を出しながらも俺は笑う。
「このやろう...ぶっ殺してやる」と、こちらに向かってきた。
既に俺の体力は限界であり、本当に身の危険を感じた。
その時扉が開くのだった。
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