第8話 幸せならいいや
「あの、髙橋さん。ここはどうすればいいですか?」
「ん?あぁ、これはこうすれば良くて...」
「...なるほど。ありがとうございます」
改めての説明となるが、うちの会社はインターネット回線の販売を主にしている会社だった。
メインターゲットは法人ではあるが、今は個人向けにも販売を行っており、基本的な仕事としては新規開拓、既存顧客のケアや問い合わせ、あとは事務的な仕事がメインだった。
俺の部署のメインは既存顧客のケアであり、問い合わせを受けて原因を突き止めて解決したり、新規事業の営業をすることもあった。
そのため、まずはざっくりとした仕事内容を覚えてもらうために、うちではどういう商材を扱っているのかというビデオを見てもらいつつ、事務で必要なことから教えることにした。
「ちなみに川上さんは前職は何系だったの?」
「事務系ですね」
「そうなんだ。ちなみに答えたくなかったら全然アレだけど、おいくつ?」
「24です」
「24か。うーん、若いね」
「そうですか?髙橋さんと4歳しか変わらないですよ?」
「4歳の差はでかいぞー。体も脳も衰えるし、体力も気力も減るからなー」
「そういうもんですかね」
どうやらあまり世間話とかは好きではないようで、あっさりと話題を流されてしまう。
それからも折角なら仲良くなろうと色々と声をかけたのだが...。
「折角ならお昼ご飯一緒に食べない?」
「遠慮しておきます。ご飯はゆっくり1人で食べたいので」
「あっ...そう...」
前職が事務ということもあり、パソコン周りのことは教えることはほぼなかったのだが、中々に愛想が良くなく、何を考えているか分からないシーンが多々あるのだった。
そうして、定時になるとすぐに帰るのだった。
なんというか、今時の若者だな。
もし強く言ったらすぐ辞めちゃうんだろうな...。
そうして、残りの仕事を頑張るのであった。
◇PM22:10 帰宅
「ただいまー」
「あっ、おかえりなさい」と、すぐに玄関までお迎えに来てくれる葵ちゃん。
【挿絵】
https://kakuyomu.jp/users/tanakamatao01/news/16818023213507846531
すると、両手を広げる。
「えっと...俺今、汗臭いからやめておいたほうがいいと思うよ...?」
「気にしないです。汗は男の勲章ですから」
「...んじゃ」と、彼女を抱きしめる。
「んっ...。ふふ。幸せです」
それは俺も同感だった。
疲れが癒さられて行く、そんな気がしたのだった。
そのまま数秒抱き合ってからリビングに入る。
すると、テーブルの上にはタウ◯ワークが置かれていた。
「これ...」
「あっ、一応お仕事しようかなって」
「大丈夫?別に焦らなくていいからね?」
「私は全然大丈夫です。悠人さんがいればそれでいいので。なので、悠人さんと一緒にいるために私もバイトをしようかなと」
「...うーん」
「不安ですか?」
「そりゃ、結構」というと、背中に回って俺を抱きしめる。
「安心しください。無理しない程度に働くだけなので」
「...おう」
「今日はオムライス作ってみました。テレビでやってたやつで結構期待しちゃってください」
「うん。期待ちゃうわ」
それからお風呂に入り、上がってからすぐにご飯を食べた。
しかし、葵ちゃんはテーブルに突っ伏してどうやら眠ってしまったようだった。
なので、頬を突いてみた。
ぷにっと柔らかい感触が残る。
「んっへ...?」と、寝ぼけながら俺の顔を見る。
「寝るならちゃんと布団に行こうな」
「ねるぅ?...わたしとえっちぃことしたいってことぉ〜?ゆうさんのえぅちぃ」と、呂律も思考も回らない状態の彼女をなんとか布団に連れてくると、そのまま抱きしめられる。
「ちょ、まだ髪とか乾かしてないから」
「んへへ、幸せぇ...」
どうやら彼女は幸せらしい。
まぁ、幸せならいいか。
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