商会のお仕事
やあ、私は身分証と商会登録証を手に入れたテンちゃん!
夢はエッチなお姉様、もといウタカゼさんに一人前にしてもらうこと! だからまずは半人前を目指すよ!
まずやることは商会でのお勉強。
マッチョな体格に似合わずとっても賢いギエンさんが通貨価値やよく取り扱われる商品の相場、その他商会のルールを教えてくれてた。
「つーわけで、うちで取り扱うのは香辛料、酒、塩、各種ポーション含めた魔法薬になる。通貨価値と相場はさっき説明し通りだ、わかったか?」
「ふぁ……えっと、塩がソルトで香辛料は酸っぱい……?」
「聞いてなかったろ? そもそも計算できねえと商会で働くなんて出来ねえぞ、信用があるところはいいが個人取引じゃちょろまかしなんて日常茶飯事だ」
何度も聞き直してなんとか通貨価値については覚えたけれど、種類がとても多かった。
まず一番普及しているのが銅貨、それでも二種類あって小中と大きさが異なり価値は小十枚で中一枚。
銅貨百枚で銀貨、銀貨百枚で金貨になり小中大に分かれてて十枚ごとに上がるとのこと。
一般的な価値観としては平民の年収が大銀貨十からよくて二十枚程度なので、まずはその程度の報酬を得られるように働いてみろと言われた。
だいたい月収が大銀貨一枚とちょっとぐらい。でもややこしいので大事な取引意外では金銀銅としか数えなくていいや。
だだ稀に貨幣価値が変わるとかで、他国との為替相場が変動するので国を跨ぐ商人は内容する金属の質が変わったかどうか確認し合っているのこと……これは覚えなくていいと言われだがややこしすぎて頭が沸騰しそうであります。
「お前に任せられるのはわかりやすいポーションか酒だな、ただ酒は取り扱いには免許いるから後々申請しとけ」
「はいぃ……うう、難しい」
「続けてりゃ覚えるさ、じゃあ基本的な説明はしたから早速仕事だ。ギルドに回復ポーションを届けてこい」
「わかりました、ちなみにポーションって一本いくらっすか?」
「うちではギルドに卸すとき一本小銀貨一枚、ギルド以外は小銀貨三枚。お得意様価格だ、忘れんなよ!」
「はいっす、忘れないっす!」
受付に行って首から下げた二つのチャームが付いたペンダント――商会登録証と身分証を見せて、配達依頼を受けた私はポーションが二十本入った箱を持って商会を出た。
ここでしっかり商会のルールをおさらい、間違えたら処分もあるらしいから忘れないようにしないと。
ヘラルスの商会で取り扱う商品は【香辛料、酒、塩、ポーション含めた魔法薬】これ以外を無断で取り扱うと処分が下る、最悪除名。
香辛料、酒、塩には免許必須、理由はこの三つがあるかないかで国の食糧事情が大きく変わるから。戦時中とかも商人は国に出入りするし大事なこと。
一番危ないのは奴隷の売り買い。国に認められた奴隷商のみ取り扱い可、無断の場合重罪人で残りの人生は地下牢生活……そういえば私が捕まえた人たち違法奴隷商の一味とか言ってたな、なむなむ。
他にも街によって取扱商品が違ったり、行商登録した人は個人商扱いなので奴隷以外なら好きなものを取り扱えるとのこと。これは行商登録したほうが楽なのでは? でも商品の相場やらを勉強してからになるな、もう少しギオンさんたちにお世話になろう。
「それにしても重い……魔法でちょっと軽くしよ」
手運びの箱の下に見えないぐらい小さな星を作って質量をマイナスに、これで反重力が発生して勝手に箱が持ち上げられる。傍から見れば重い荷物を精一杯持ち運んでいる美少女テンちゃんだが、実際は手を添えているだけ、超楽ちんだ。
それにしてもこの魔法、作れる星の大きさは自由っぽいけど大きいの作ったらどうなるんだ? 教えて女神様。
『下手に大きいの作ると大地巻き込んで消滅するんでお勧めしませんよ。あと作るのも消すのも大変です、慣れないうちはそうですね……元男性のあなたにわかりやすく言うとタマぐらいの大きさで扱う方がいいです』
「女神様の口から聞きたくない言葉ランキング第一位ぐらいの単語言った?」
『下の話がお好きなのかと思いまして』
「突然の下ネタは引かれるから言わない方がいいですよ、危うく結婚したいポイントが3減るとこでした」
『もう言わないので1ポイント下さい、切実に』
「わかりました」
やったー! と歓喜の声が頭の中で鳴り響いて女神様の気配はなくなり、私は配達先の冒険者ギルドとやらに到着した。
配達先ということで受付の人にどんな場所か聞いてみたんだけど、想像通りモンスター討伐とかで生計を立てる人たちの集まりで荒くれ者が多いそう。ギルドマスターが街でも好かれていて、メンバーも悪い人ではないらしいのだが一般人とは生きる世界が違うために暴力的に見えるそうだ。
まあ考えてみれば公務員的な役割でもないのに武器や鎧を身に着けて街を歩いている人は怖くみられるんだろうな。商会はお得意様って言ってたし私がひどい目にあうことはないんだろうけど。
とりあえずお仕事なのでなにも考えないでギルドに入ってみると、私の目の前にマッチョが飛んできた。
見間違えじゃない、あれはマッチョだった。
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