野盗回収!え、違う?
森の中に戻るといまだにひしめき合ってる野盗共が泣き喚いていた。
「死にたくねぇよー!」とか「おかあぢゃーん」って叫ぶ元気はまだあるようだ。だいぶ反省してるだろうし解放して街まで連れて行こう。
「おじさんたちー?」
「ああっ! あんた、悪かった! 俺達が悪かったから助けてくれ!」
「いいけど条件付きです。この先のヘラルスで自首すること、そんで私を襲おうとしたこともちゃんと言う事、わかった?」
「わかった! わかったから頼む!」
大の大人が涙やら鼻水垂らして顔真っ赤にして言うもんだから、こっちが悲しくなってきて早めに魔法を解除してあげた。
逃げられないことを察しているのか、誰も逃げ出したりしないのでそのまま街へ向かうことにして――
「門番さん、証拠連れてきたんですけど」
「ペングインの紋章!? 違法奴隷商の子分をお前どうやって捕らえた!?」
「野盗じゃないの? ああ、えっと……襲われたところまでは本当で、実は捕まえたんだけど放置してたっていうか」
「おいなんでも話す! 牢獄でも行くからこいつから遠ざけてくれ!」
「な、何だお前ら! ええい捕らえろ、詰め所に全員連れて行け!」
泣きっぱなしの野盗? が門番さんの後ろにいた人たちに連れられてどこかへ向かっていく中、私はとりあえず信じてもらおうといろいろ終わるのを待っていたら対応してくれた門番さんがまた来てくれた。
「テンと言ったな、詳しい話を聞くから来い」
「あざっす、わかってくれてよかったです」
促されるまま入った部屋は門番さんより重厚な鎧を着た人が二人いて、片方は扉の前で逃げ道を塞ぎもう一人が門番さんの後ろで待機という布陣。
まずい、完全に囲まれた! なんて焦る必要ないよね、最悪上下に逃げられるし。
「まず捕縛の協力に感謝する。あいつらは違法奴隷商の一味でこの辺を根城にしていたんだ」
「あらまあ、よかったぁ捕まらなくて」
「それでなんだが、どうやって捕まえた?」
「なんかこう……ひょいって?」
「ふざけないでくれ、そんな簡単に捕まるならこっちも手を焼いてない」
「……魔法で捕まえました」
女神様の知識では魔法自体は世界中に普及した技術、魔法使い自体は少し珍しいがそれでも怪しまれるほどではないとのこと。
「魔法使いか……いや、それ自体は悪いことじゃない。じゃあなぜ最初嘘をついた?」
「勝手がわからなくて、とりあえず街へ入れればなんとかなるかな、と」
「身なりが良いくせに身分証もない、魔法使いなのに街の入り方も知らない、野盗と奴隷商を間違える……どこの家出お嬢様だ、お前みたいなの始めてみたぞ」
うん、私も私みたいなのいないと思う。
その後もいろいろ聞かれて、魔法をどこへ覚えただのどこから来ただの聞かれたけれど、とにかく記憶がないの一点張りだった私の前に白い水晶玉が置かれた。
「触れて喋ってみろ」
「なにこれ?」
「神に伺いを立てて真実を知るための魔道具だ。嘘をついたらわかる」
わお、それもしかしてあの女神様ですか? この玉を通して女神様と会話できると、ならこっちのもんだ。
なんせ私は女神様の好きなものナンバーツーを誇っているからな。伊達に異世界来る前に結婚の申し込み受けてねえぜ! 断ったけど!
「名前は?」
「テン……」
水晶が青く光る、詰められないということは本当のことを言うと青くなるようだ。
「この街に来た理由は?」
「仕事が欲しくて」
また青く光る。
女神様もしかして私が考えてたこと全部知ってる? プライバシーって言葉知らないタイプ?
『病める時も健やかなる時も女神を愛すると誓いますか?』
「……いいえ」
水晶が赤く光った――じゃなくていま質問したの門番さんじゃないな!?
女神様勝手に私情込み込みの質問しないでくださいよ、赤く光ったら疑われるじゃないっすか!
「おい勝手に喋るな、質問なしで答えると何に対しての答えかわからないんだ」
「すんません、幻聴が聞こえたもので……」
「次だ、魔法をどこで覚えた?」
「気づいたら使えました」
これは自信がなかったが、女神様が気を利かせてくれたのか青く光った。
ありがとう、そしてごめん女神様……でもまだ結婚は早いと思うんだ。
「本当に記憶がないのか……だが魔法使いだし、放っておく事もできないな」
「あの、私やっぱり街へは入れませんか?」
「……ウタカゼさんに連絡を取ってくれ、あの人ならどうにかしてくれるかもしれない」
門番さんの後ろにいた鎧の人が無言で出ていき、残った私は立ち上がるよう言われて待っていると、門番さんが部屋の奥にあった変な形の道具を持って来て私の前に立つ。
「服を脱げ」
「……?」
一瞬理解が遅れたんだけど、脱げって言われた? 門番さんの前で、後ろの扉には鎧さんがいる状況で?
「身体検査だ。お前獣人だろ、街に入るなら必要なことだから上脱いで立ってろ」
「入れてくれるの!?」
「野良の魔法使いを野放しにはできんからな、身寄りのない奴の面倒を見てくれる人がいる。その人が来る前に終わらせるぞ」
やったー!
女神様ありがとう、結婚したいポイントが1ポイント増えました!
『上限は2ポイントですか?』
「それは考えときます……」
とりあえず自分の中でポイント上限は1万に設定した。
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