31,光×そして×宇宙船【国府田音羽】

 どん、どん、どん、と地面が揺れた。そして地面がなくなった。地割れが起きたと気づいた瞬間私はもう落下を始めていた。右手は学の左手を掴んだままだ。このままでは学を引いて一緒に落ちてしまうと思った私は、とっさに手を放そうと思ったけれども、逆に強く掴まれた。そして、まだ、どん、と揺れ。学の体は宙に浮き、踏ん張る場所のないその体は私と一緒に地割れにひきづり込まれた。私と学を呼ぶ耕治くんと京子ちゃんの声が聞こえる。その声がどんどん遠くなる。学が私の体を強く抱きしめる。いつかの飛行ガサの時のように。私も学の体を強く抱きしめる。このまま、あと数秒後、底に叩きつけられて死んじゃうとしても、もう、後悔はないと思った―――


 ―――光。

 裂け目の壁面が光っている。

 落下が遅い。いつまでたっても地面に激突しない。

 光に包まれて、体が浮いているようだった。

 光の中から声が届く。知らない言葉だけれども、なぜか意味が分かった。


 『生体認証確認。起動します』


 私は、その光の中に吸い込まれ、目を開けると。

 ―――宇宙船のコックピットにいた。

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