第8話 大ジョバない


「よし普通にでるぞ」

「はい!」

 俺たちは外に出て車に乗る。

「なんですかこれ?わー、あれも!あ、あれはなんですか?」

「これは車であれも同じあれはスカイツリーだな」

「へぇ、ふうん!ほおほお」

「珍しいのか?」

「はい!こんな世界があったんですね!」

「お前…て言うか名前も聞いていなかったな?」

「私はミスティです。あなたは?」

「俺は忠野健人だ、ケントでいい」

「ケントの国は空が狭いですね」

「あぁ、ビルが立ち並んでるからな、ミスティの住んでたとちはどんなだったんだ?」

「私の住んでたルバリオル大陸は年中戦争していました。魔法戦争です。大地は枯れて痩せ細ってましたね」

「ほうほう、勇者とかは?」

「いました。魔王を封印してどこかに去りましたけど」

「やっぱりいたのか」

“パァァァァ”

 クラクションが鳴る。

「っは!ミスティ!そこは触っちゃダメ!」

「はい!音が鳴るんですね」

 心臓が飛び出るかと思った。

「はぁ、ミスティ、うちに帰ってもいいか?」

「はいどうぞ!」

「ミスティは…しょうがない、面倒を見るしかないか」

「ありがとうございます!」

「んじゃシートベルトをしてくれ、これをこうだ」

「これを、こ、こ、こぉぉぉー」

「あはは、もっとゆっくりやれば大丈夫」

「あ、できました」

 もっとクールだと思ったがドジだな。


 車の運転中はミスティはあれはなんだ?これは?の繰り返しだ。


「はい到着っと、このボタンを押すと外れるからな?」

「はい!」

「さ、降りてくれ」

「はい!」


「ここが俺の家と言うか部屋だな。まぁ、そんなに散らかってないと思うから入ってくれ」

「お邪魔しますっと」

「流石に靴は脱げよ?」

「はーい!」

 物珍しそうにいろんなところを見て回るがやっぱりテレビに目が釘付けだった。

「あんまり近くで見てると目が悪くなるからなソファーに座ってみろよ?」

「はい!」

 テレビに夢中だから昼飯でも作るか。

「おーい、腹は減ってるか?」

「ぺこぺこ」

「分かった」

 普通にチャーハンを作ってスープはお湯で割るだけだ。

「いただきます」

「いただきます」

「おっ知ってたのか?」

「さっきテレビでみたから」

 まあ、昼時のテレビだからな。


 食い終わって片付けをしていると、さっきまでテレビに夢中だったのに外を見たりベットで飛び跳ねたりしている。

「暇なのか?」

「ひま」

「なら買い物行くか、どうせそれしかもってないんだろ?」

「うん」

「んじゃ、買い物だな」

 車で近くの大型スーパーに買い物に来た。


 女物の服屋の前に来たがなぜか選ばないので、店員さんを呼ぶ。

「彼女に似合う服を二、三着お願いします」

「わっかりました!あら可愛い人ね」

 試着室から出て来ないであれよあれよで五着分が決まった。

「すいません三着のつもりがどうしても似合ってしまうので」

「あはは、いいですよ」

 お会計をして次は下着売り場に行く。

 さっきと同じ様に店員さんに声をかけて選んでもらう。

 これが一番無難だからだ。

 こちらも五着ほど買って後は可愛いニット帽があったので買ってやると一番喜んでくれた。


 晩飯の時間も近いので車を置いて近くの中華屋に入る。

 いつも頼んでるラーメンと餃子に唐揚げと生中を追加で注文する。

「ミスティも飲むか?」

「うん、飲む」

ミスティの分も追加した。


 いい気分になる頃には眠くなったのかうとうとし始めるのでおぶって帰る。自分のベッドに寝かせて俺はソファーに寝ることにした。


 次の日の朝はミスティに起こされた。

「ミスティ、俺は寝てるんだけどな」

「テレビ見る時はソファーに座るって言ってたから」

「その間に俺がいるんだが」

 分かったよ起きるよ、

「起きるから退いてくれないか?」

「分かった、でも大の大人が朝起きないのはどうかと思う」

 時計を見ると11時だ。

「俺は大人でそんなに働かなくても大丈夫だから寝過ぎてもいいんだよ?」

「それは屁理屈!」

 つまりはもう少し早起きしろってことね。

「分かった分かったよ。もう少し早く起きる様にするよ」

「分かったならよし」

 何がヨシなんだよ?

「まぁ昼だから昼飯食いがてらギルドに行くか」

「うん、そうする」

 ちゃんと服も着ているのでオッケー。


 ドライブスルーで昼飯を買って食いながらギルドに到着した。車の中で中休みをとってからギルドに行く。


 そうか、ミスティのカードがあるんだった。

 ミスティは幻術で免許証を見せてそれからギルドのカードを作りに行った。

 一時間ほどで返ってきたミスティはカードをこれでもかと見せてくるので、良かったねと言って頭を撫でると赤くなっていた。

 ついでにダンジョンに入るとミスティの武器は?

「ミスティ?武器は?」

「無い」

「使わないのか?」

「弓を使うよ」

「じゃあ弓買わないと」

 欲しい弓はリラが足りないと言うので、

「銀の弓か、スティールボウ」

「銀の弓」

 銀の弓を買うハメになってしまった。


「うし!大事に使う」

「おう!って矢は?」

「要らない」

「そっか」

“キュオォォォォォ”

 と、とてつもない音を出しながら飛ぶ魔法の矢は見事命中して敵を倒して見せる。

「おお!これでミスティも稼げるようになったな!」

「うん、でも出て行く気はない」

「いやいや、俺も男だからな!」

「大丈夫」

「いや大ジョバないから」

「言葉が変」

「もぉ、いいや、行くぞ」

「はい!」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る