第81話 貝殻ビキニアーマー
古いイタリアの街並みを思わせる風景に舌を巻く。ネット画像で見る観光地を思わせる建物に見とれてぼーっとしていた俺に声がかかる。
「トウヤ、こっちだ」
「ん、ああ……」
ゼル姉さんに手を引かれ、俺は帝都ロドニアのメインストリートと思しきところを歩いていた。人がごった返して、前に進むのも後ろへ下がるのも大変なくらいだ。彼女に手を引いてもらわないと迷子になってもおかしくない。
そんな笑顔もできるんだ。
メルフィナと和解する前のゼル姉さんは、疵の残る顔と合わさり険しい表情でいることが多かったのに……。和解と共にゼル姉さんはメルフィナに顔の古疵を舐めてもらい、治していた。
すると、どういうことだろうか?
「おい、あれ……」
「ゼルさまだな……」
ゼル姉さんが男たちの前を通るだけで、彼らは雷に撃たれたように立ち止まり言葉を失う。
「あんなに美しかったなんて……」
「信じらんねぇ」
そのまま残しておいても歴戦の女戦士みたいで格好良かったのだが、疵が癒えたことで彼女が目を見張るほどの美女であることが際立っていた。そんな男たちに一瞥もくれることなく、ゼル姉さんの心は俺にだけ注がれているように思える。
「どうした、トウヤ?」
「いや、ゼルは美人だなって」
「な!? なにを馬鹿なことを言ってるんだ、わ、私が美人なわけな、なかろう」
ゼル姉さんは否定はしたものの、明らかに動揺しているようだった。顔だけじゃなく耳や首筋などの肌を赤くしてるところを見るに相当照れているらしい。
神社に出されるような露店のように派手な色ではないものの、街頭の雰囲気はそれに近かった。露店には現代に似た野菜や果物だけでなく、見たこともないような逸品が並んでいる。
バシン! バシン! と乾いた音がしてくる。何かと思って視線を向けると……。
鞭で素肌を叩かれている男性の姿を見る。
「ん? なにか珍しい物でもあったのか?」
「奴隷……」
「トウヤは奴隷を見るのは初めてなのか? そうか、クローディスでは廃止されてるのか……」
「懲罰的に落とされるだけみたいだ」
そうか、とゼル姉さんは頷いていた。
「国力は帝国の方が高いが……」
ボソリと彼女がつぶやいたが、その後はキュッと下唇を噛み、口を噤んだ。
王国で生まれ、追放された後に帝国に仕官したとメルフィナから聞いていたが、帝国にも思うところがあるんだろう。訊ねることもできたが、傷をえぐるようで気が引けた。
きょろきょろと露店に並ぶ品々や取引する人々
を眺めていると……。
ぐうと腹の虫が鳴いてしまう。
俺もメルフィナといっしょに過ごす内に食いしん坊になってしまったのかもしれないな。
なんて思いながら、ゼル姉さんの案内で歩いていると彼女は先に見える古い建物と新しい建物の間の路地を指差した。
「あの路地裏に旨い飯を出す酒場がある」
ゼル姉さんの案内で陽が届き切らない路地裏を歩いている。
それだけで俺はドキドキしてきていた。何せ、ゼル姉さんは貝殻水着にマントを羽織っており、見方によっちゃただの痴女にしか見えない。
メルフィナに彼女のビキニアーマーを奪われたのであり合わせの素材で作ったらしいのだが、なにか拘りでもあるんだろうか?
ここでゼル姉さんはマントを開いて、俺だけに貝殻ビキニアーマー(?)を見せてくれるんじゃないか、なんて妄想がむくむくしてしまう。
「見ろ、トウヤ」
「なっ!?」
「声がデカい、静かにしろよ」
「ご、ごめん……」
ゼル姉さんが俺に見せたものは……。
―――――――――あとがき――――――――――
ついにメガニケ1.5周年記念イベントがやって参りました。作者はこの日のためにシコシコと石と高級チケットを集め、クラウンガチャに挑みました! 石15000、チケット20という過去最高の軍勢であります。これで引けぬ訳がない!
えー、結果はサクラ2体ということでスマホを握る手が震えて止まらなくなりましたよ……。
しかし! 泣きの一回とばかりにメガニケ運営さまがステラーブレイド発売記念ということで高級チケット10をプレゼントしてくださり、無事クラウン陛下をお出迎えすることができました!!!
ありがとうステラーブレイド、ありがとうメガニケ、おしりに栄光あれ!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます