第7話

咳が目立つけど、最初の頃よりはだいぶ落ち着いてきたイルカ。

それでもまだまだ本調子ではないはず。

だからちゃんと回復するまで、しっかり見守っていないと。

だから私の膝の上で体を休めるしかない。


「…コホ…ねえ……カモメ…」


「なぁに?」


頭を撫でていると上目遣いで私を見てくる。


「私もう…平気なんだけど……」


まぁたまた、無理しちゃって。そんなに私に心配させたくないんだろうな。

愛らしくて、ついつい撫でる力が入ってしまう。


「わ、わしゃわしゃしないで……」


「あっごめんごめん!」


自分でくしゃくしゃにしてしまったイルカの髪を、丁寧に元の髪型に戻していく。


「……体洗いたい…に、匂いとか、あるだろうし…」


イルカは恥ずかしそうに、そっぽ向いては上目遣いで見てくる。

確かに看病の際、体はこまめに拭いたけど、頭は流石に洗えなかった。

イルカが気にするのも無理もない。


「体は念入りに拭いたから大丈夫だと思うけど、頭は流石に洗えなかったから、そうだよね。気になるよね?」


「……え?」


「ん?」


なにやら、幽霊や妖怪でも見たかのような顔で私を凝視してくる。

変な事は言ってない。もしくは虫が近くにいるとか?


「え?なになに?虫かなんかいた!?」


「お前だよ!!変態は!ふふ、ふい、拭いたって!どどど、どこ!?どこから……どこまで!?なな何で!?まさか……舐め……」


出会ってから初めて聞いた。こんなにも大きい声で早口なイルカを。

新たな一面を見れた事に私はつい口元が緩んでしまう。


「……ひっ…やっぱり舐め、たんだ……」


「…………舐めてないよ!!!!」


顔を真っ赤にして泣きそうなイルカを見て冷静になる。

私はテンパりながらも説明する。


私は滝に行き、水を運んだ事。

1回1回滝に行くより、そばにあった方が良いと思い、漂流物から水を入れられる物を探したり、小さな果物をたくさん潰してジュースを作ったり。

汗を拭くためにちゃんとハンカチを使った。

舐めたりなんてそんな変態な事はしてない。

ちゃんと心配で自分なりに看病したつもりだ。


「……ごめん。ちゃんとそばにいてくれて。ありがとう…カモメ……でも拭いたから、見たんだよね……?」

「うん!薄すぎて自分の子供の頃思い出しちゃった!」




私は少しでも明るい空気にしようとしただけだった。

恥ずかしそうにしてるイルカを思っての事だった。


それなのになぜ、イルカは怖い顔で私のパンツを脱がそうとしてくるの?



「…お前のも……見せろおぉぉぉ!!!」


「イルカさん!?ここ、こうゆうのはちょっと!……困ります!!」





本当に、元気になってよかった。



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