第4話 

雑木林を歩くこと30分。そこには小さな滝がある。毎日、食べ物を探す途中で立ち寄り、そこで服や体を綺麗にする。

滝の下に大きい池なんてない。小さな川があるくらいで、全身に浴びる事はできない。

持っているハンカチを濡らして、体を拭く。ハンカチをよく洗い流し、指に巻いて歯磨き。



「イルカーさぁん。シャンプーおねがいしまーす!」


私は頭だけ川に出して仰向けに横たわると、イルカを呼んだ。

イルカは葉っぱを私の目に置く。これで少しは美容室で頭を洗ってもらう気分になれる。


もちろんシャンプーなんてないし、お湯もない。ただのごっこ遊びだ。

私達はお互いに、時間をかけて丁寧に頭を洗う。


「お客さん最近髪に艶が出てきましたね~何かしてます?」


「本当ですかー?きっとこのお店の水がいいんですよ!」


「やっぱ分かります?最近、天然水に変えましたからね~」



笑い合う私達。このくらいしなきゃすぐに潰れちゃう。



イルカは丁寧に私の頭を洗ってくれた。イルカの小さな手が優しく髪を包み込む。

気持ちよくて、丁寧さが嬉しくなる。


「ありがとう。じゃあ次はイルカがお客さんね」


イルカの優しさに答えようと、私もやる気がみなぎってきた。


私は指でイルカの細い髪を丁寧にすいていく。軽く揉んだりして、水で洗い流す。

水しかないから、やれることは少ない。だからこそ私達は念入りに洗う。


「じゃあイルカの好きなのやるねぇ」


イルカは頭皮マッサージが好きだ。指先で押しては水をかける、これの繰り返し。

丁寧に優しく、髪を綺麗にしていく。

この時気持ちよさそうに、ちょっとだけ口を開けている。イルカの可愛い所だ。


目隠しをしていて、このだらしない口元。

私はその口と反応を見ながら頭を洗うと、すごい捗る。





「…気持ちいい?」


耳元で囁くと、イルカは微かにピクッとはねる。


「……ふぁい…」


(あ、やばい。イルカさん?えっちだよ?)


黙々とイルカの髪を洗う。反応を見て強く触ったり、優しくなぞったり。


耳をつまんで、優しく擦る。周りから耳たぶ、耳の裏、徐々に小さな穴に近づいて行く。

そして私の指が小さな穴の入り口を擦る。


イルカの口がさっきよりだらしなく開いている。


私は至近距離でイルカの反応を見ながら、両方の耳の穴をゆっくり擦る。


微かに漏れる甘い声。


私の鼻息が葉っぱを飛ばす。


するとゆっくりとイルカが目を開ける。

潤んだ瞳に、蕩けた表情に、甘い声で呼ばれる。


「…かもめぇ…」


私の顔はゆっくりと沈む。その小さな。


川へ。


私はぼこぼこと大きな音を鳴らす。


「かもめ!?」





私は我慢できるのかな?




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