第5話 姫様とドーナツ
姫様は甘いものをこよなく愛している。
この世には砂糖と油でできているものはすべからくおいしいという法則があるようだ。
姫様は運動が嫌いだ。でも、美味しいもののためならば体を動かすのも悪くない。
今日は地元で評判のドーナツ屋まで散歩することにした。
重い腰を上げ、ようやく出発したのは午後三時を回った頃だった。
おいしい店は早々と店じまいしてしまう。
姫様は足早に城の門を通り抜けた。
案の定、店には入店待ちの客達の列ができていた。
姫様も列の最後尾に加わりつつ、ガラス越しにショーケースに目を走らせたが、土曜日限定メニューと人気商品のいくつかは品切れになっているようだった。
並んでいる間にも、長蛇の列を見咎めた通行人達が次々と列に加わってくる。
殺風景な商店街の一角に店を構えているにも関わらず、盛況ぶりは見事であった。
やっと姫様の番が回ってきたが、買おうと決めていたポンカンのドーナツは売り切れになっていた。
窓越しに並んでいる客たちの視線を痛いほどに感じながら、姫様はとりあえず全種類のドーナツを一つずつ買うことにした。
さくら、ラムレーズン、アールグレイクリームチーズ、チョコレートクリーム、バターキャラメル…
素晴らしい戦利品を得て、姫様はほくほく顔で城へ戻った。
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