第4話 姫様とマーヴェリック
マーヴェリックは同期の中でも随一の色男であった。否、彼の女を虜にする才能は今なお健在だが、最近はかつてほどギラついてはいないようだ。
入学当初、マーヴェリックの容姿の美しさは一際
であった。彼の肌は健康さを感じさせながらも白く輝き、その瞳は他の者のそれより色素の薄いブラウンで異国を思わせるのであった。
その名を国中に轟かせる名門男子校の出身で頭脳もさることながら、バンドでは華形のエレキというこのギャップ。女子が放っておくはずがないのであった。
女性関係でのトラブルがあって以来、以前より嫉妬心を燃やしていた男子からは除け者扱いされていた。だが当の本人は慣れたもので、今では全く気にならないようだ。
マーヴェリックは他の幼稚な男子とは違い、どんな女性に対しても紳士的な態度で対応する。それは彼のチャーミングな所であり、また冷徹さを感じさせる部分でもあった。
姫様がみるに、マーヴェリックは非常に屈折している。一見明るく楽観的に振る舞っているが、それは繊細で不安定な内面を隠すための鎧に過ぎず、彼の本当の姿はもっと素っ気無いものであろうと感じていた。だが彼自身がキャラクターを演じることを楽しんでおり、周囲の人間もそれを望んでいる限り、指摘するのは野暮に思えた。
彼の本当の姿を自分だけが知っているなどと耽美な喜びに浸りたい気持ちもあったが、ロマンスに憧憬を抱くことはあっても、飛んで火に入る虫になるのはやはり御免であった。
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