第3話 姫様とブラン

姫様がブランと親しくなり始めたのは、入学して2年目のことだった。

毎年春には新入生の入学の前に在校生が一斉に引越しをして校内を大掃除する。

姫様の学年は、学年内での引越し先に関する揉め事や上級生からの圧力など諸々の事情があり、新入生の入学直前に「地階」とかけて「地下」と呼ばれる1階へ引越しし直す犠牲者を出さなくてはならなくなった。

度重なる議論の末、結局根負けしたブランが3月の末日に1階へやってきたのだった。

えらく奇特な人もいるもんだと感心したのをよく覚えている。

この学校ではそういう人間は搾取されやすいが、ブランはその類の人間ではなかった。

というか、強かった。

ブランは自分の意見をはっきり言える子であった。

姫様は内心違うと思っていても、周りの反応を伺って右へならへとばかりに立場を翻す癖があった。それは彼女なりの処世術であり有用な生存戦略であったが、自分を殺すのはやはり胸が苦しいのであった。

ブランは一匹狼でも孤高で強く美しかった。

堂々と胸を張って自分の意見を貫き、説得力のある生き方をしたいものだと姫様は思うのだった。

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