第2話 姫様とキツネ
姫様はとある寄宿学校で暮らしている。キツネも住人の1人である。
とりたてて仲がいいわけではないが、姫様が友人と呼べる数少ない存在の1人だ。
姫様にはキツネを信用できない事情があった。
キツネは入学した当初、姫様のものはなんでも欲しがった。洋服、部屋の調度品、メイク、友達に至るまで、自分のものにならないと気が済まないという有り様であった。
色々あったが、こうして仲が続いてるのも何かの縁だろうと今では思っている。
とはいうものの、キツネも必ずしも悪ではない。
振り返ってみると、本当に困っている時になんでもないことのように助けてくれたのはキツネではなかったかーーーそう思うと、腹が立つことがあってもなんだか憎めない気持ちになるのであった。
以前、姫様が試験で落第した時に勉強に役立てばと、自作の資料の束を貸してくれたのは他でもないキツネであった。また、試験期間は部屋に招き入れ連日一緒に徹夜で勉強会をしてくれたのもキツネであった。姫様達の寄宿学校は2科目以上の落第で即退校処分が下る。生徒達にとって落第は死活問題であり、試験期間は皆殺気立って勉強している。極限状態では人間の本性が表れるというし、姫様にとってキツネは多少いけ好かない性質を持っているとしてもまごうことなき貴重な戦友である。
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