決意

絵空は恋愛に興味を持たずに生きてきた。小中学校どちらでも、何度も告白をされてきたが、その誰にも付き合うほどの魅力を感じられずにいた。


絵空のことを他人から言わせればこうだろう。品行方正、清廉潔白、成績優秀、運動神経抜群、いわば完璧美少女。艶のある呂色の髪はポニーテールにまとめており、顔は人気のアイドルや女優よりも整っている。スタイルも抜群で、もはや欠点が見つからない。強いていうなら、恋愛に疎いことくらいだろう。


絵空も自分が可愛いことは自覚しており、それを奢るわけでもなく、事実として受け止めている。実際、告白してきた男子達も、可愛いからとか、そう言った理由がほとんどだった。


たまに女子からも告白されたが、男子達と同じようにお断りしていた。


そういうわけで、詩音に恋をしたのは、絵空にとって予想外だった。自分より可愛い人は見たことがなかったし、自分は一生恋愛を経験せずに生きていくものだと思っていたからだ。


初めての恋。絵空は動揺しつつも、一つの決心を固めていた。この初恋を成就させるためにー


(絶対に、一条先輩をオトして見せる!)


初恋を経験し、絵空の心は熱く燃え上がっていた。




翌日、詩音と関わりを持つため、絵空は図書委員に立候補した。特に人気のある委員会でもなかったので、順当に絵空が選ばれることができた。


ちなみに部活動は入らないことにした。なぜなら先輩との時間が減るからだ。


これで詩音と関わりが持てると思うと、頬が緩んでしまう。そうしてニコニコしていると、後ろから肩を叩かれた。


「どうしたの、絵空。そんなご機嫌な雰囲気振り撒いて」


そうして尋ねてきたのは、谷川咲たにがわさきだ。中学からの友達で、一番仲が良いと言えるだろう。


クリーム色の髪をショートカットにしており、背は女子にしては高い。クールビューティーと呼ぶに相応しい顔立ちに、サバサバとした性格で好感が持てるし、それでいて気遣いもできる。だから、絵空は咲のことをとても信頼している。


先日バレー部に誘ってきたのも咲だ。結局入部を断ってしまったが、嫌な顔ひとつせずにいてくれる。


「ふふ、ないしょ」


そう言うと、咲はつまらなそうな顔をして、ため息をついた。今度はジトっとした目で見つめられる。


「別にニコニコするのはいいんだけど、視線集まるからよそでやってよ」


言われてから気がついたが、数人のクラスメイトがこちらをぽーっとした表情で見つめていた。


「ああ、ごめんね。さすがに自重する」


笑みを抑えたが、やはり嬉しさが勝り、口がニヤニヤしてしまう。結局その後も笑みは収まらず、咲にジトっと見られ続けたのだった。





「で、今日はなんでそんなにご機嫌なの?」


昼休みになり、一緒に昼ごはんを食べていると咲が唐突に聞いてきた。


機嫌がいい自覚はあるし、理由もわかってるけど、あまり人に言うことでもないかなと思う。とは言え、さっきははぐらかしたけど咲になら言ってもいいかなとも思う。


咲なら人に言いふらすこともないだろうし、いざという時に頼りになる。


「耳貸して」


そう言って、咲に耳を寄せてもらう。


「実は私、、、昨日初恋しちゃいました!」


小さな声でそう言うと、咲は目を見開いてこちらも見てきた。


「え、あんた恋愛に興味ないとか言ってなかったっけ」


驚いた様子だったが、気を使って小さい声で言ってくれるところが咲のいいところだと思いつつ、質問に答える。


「うん、でもね、一目惚れしたんだよね」


あれは確かに一目惚れだった。一目見た瞬間、心臓がドキドキしてありえないくらい緊張したし、なにより詩音と付き合いたいと強く思っている。


「へえー、そんなこともあるんだねぇ」


咲は中学の頃の私を知ってるから、恋愛への興味のなさも知っている。だからこそのこの反応だろう。


実際私も自分に驚いたので、あまり咲のことも言えない。


「うん。で、その人が図書委員だから、同じ図書委員になれて喜んでたってわけ」

「なるほどね。まあ、意外だったけどよかったね」


こうやって一緒に喜んでくれるので、話してよかったなと思う。


「はあ。早く会いたいな、一条先輩」


私がそう言うと、咲はさっき以上にびっくりした表情を見せた。


「え、ちょっと待って、一条先輩ってあの『銀姫ぎんき』の?てか男の人じゃないんだ」


こんなに動揺してる咲を見るのは初めてかもしれない。たしかに恋愛対象は男性と言う人が多いけど、私はたまたま女性を好きになっただけだ。それよりも、『銀姫』とはなんだろう。


「『銀姫』ってなに?」

「知らないの?」


私がそれを知らないことにも驚いていた。咲によると、『銀姫』というのは名前の通り、銀色の髪をたなびかせた姫のような容姿のことを指しているようだ。


たしかに、詩音の姿は姫と言っても過言ではない。絵空からすれば、姫以上のものだが。


「そんなのあるんだね」

「うん。でも、もうひとつ噂があって、周囲にすごい冷たいらしいよ、『銀姫』」


それを聞いて驚いたが、しかし納得もした。詩音と初めて出会った時、詩音の態度はお世辞にもやわらかいとは言えないものだったからだ。


それでも、絵空の気持ちは変わらない。なんなら最初は冷たい態度を取られた方が燃える。


絵空と咲がコソコソと話していると、昼休み終了のチャイムが鳴った。


「まあ、頑張ってね、絵空」

「うん。私にとって初めての恋だから、全力で先輩をオトしにいくよ!」


そう言って決意をみなぎらせる絵空に、咲はらしいなと思いつつ、一条先輩に少し同情した。


(絵空がいつになくやる気っぽいし、『銀姫』も大変だろうなぁ)



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こんにちは、福猫です。


序盤ということで早めに投稿してますが、ここからは本当に投稿頻度がやばいので勘弁ください。3月中盤からは週二くらいのペースで更新する予定なので、それまでは申し訳ないですが、たくさん待っていただく形になります。


まだ描き始めて間もないので至らぬ点が多くあるでしょうが、暖かく見守っていただけると嬉しいです。


2話目も読んでいただき、ありがとうございました!

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クーデレな銀髪美少女に、生まれて初めて恋をしました。〜絶対にオトしてみせる〜 福猫 @fukuneko1111

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