三題噺置き場

第1話「甘いのは、バレンタイン前日までかもしれない！」【ラッピング/ユートピア/ホワイトアウト】

「甘いのは、バレンタイン前日までかもしれない！」【ラッピング/ユートピア/ホワイトアウト】

俺は青春真っ盛りな男子高校生。

もちろん、好きな人がいる、クラスで一番仲良くしているカエデちゃんだ。

彼女は、非常に気さくで、お互い冗談を言い合ったり、帰りを共にする仲だ。

仲がよすぎるあまり、クラスで「付き合ってるの～？」って茶化されたりすることもしばしば。

俺は正式に思いを伝えたことはないが、カエデちゃんの事が好きである。

当然、冗談もいい合い、下校も毎回一緒なのだから、彼女も俺の事を好きでいるに違いない。

そんな中、2月14日が迫っている。

バレンタインデーだ。

俺は、バレンタインデーの日にいつものようにカエデちゃんとの下校をし、別れ際にラッピングされたチョコレートを貰う『妄想』をしていた。いや、確信していた。

そして、俺も男である以上、彼女が一生懸命気持ちをチョコに込め、俺に渡してくれるのだから、誠実に気持ちに応えるべきだろうと、思っていた。

俺は、チョコを受け取り、正式に「好きだ」という気持ちを伝えようと決心していた。

そして、俺の告白は成功し、そしてカップルが成立する。何というサクセスストーリー、なんというユートピア！俺は毎日が楽しくなった。

ウキウキで、あっというまにバレンタイン当日が来た。

「バレンタインとはなんと素敵な日なのだろうか、この世に幸せなカップルが誕生する最高の日だ！」

この日は、退屈な授業でさえワクワクした気持ちで受けることができた。

下校の時間になり、校門の前で一緒に下校する未来の彼女カエデちゃんを待つことにした。

俺は、緊張で手が汗ばんでいた。

しかし、頭の中では、カエデちゃんが少し照れながら上目遣いで恥ずかしそうにチョコを渡し、それをしっかり両手で受け取る。

そして「俺はカエデちゃん好きだ！」と気持ちを伝え、さらに告白が成功し俺とカエデちゃんがカップルになるシュミレーションを何回も繰り返していた。

気持ちが、落ち着いてきた頃、学校側からカエデちゃんの姿が見えた。

俺は少し深呼吸をした。

いつものように、一緒に帰ろうと近づこうとすると、「カエデ！」と名を呼びながら彼女に駆け足で近寄る同じ学校の男子学生が居た。

「馴れ馴れしいやつだな」と思いながらカエデちゃんの方に向かと、その男子学生はカエデちゃんと腕を組みだした。

「え・・・？」っと思っていると、二人は俺の目の前を通過し、校門から出て行ってしまった。

「アレ？え・・・」「俺と帰え・・・・え？？？」しばらく思考が追い付かなかった。

しかし時間が経つと、思考が整理されカエデちゃんとカップルになったのは俺ではない別の男子学生である事を理解した。

しかし、理解すると同時に貧血を起こし、目の前が真っ白になった。

「これがホワイトアウトってやつか・・・・」（多分違う）

一人での下校は、信じられないほど虚しかった。